Maori

母語を話す権利 (6)

基本的人権の中では生存権が何よりも重要であり、その生存権を保障するためにこそ教育権や労働権の保障が重要なのであるが、こうした基本的人権を保障するためには母語を話す権利という言語権を保障しなければならないということは案外見過ごされがちだ。 ア…

例外なくマオリは英語を話すが、マオリ語を話せないマオリはいる (5)

以上のような歴史的経緯から、今日、ニュージーランドに住むマオリにとって、英語を話すことは当たり前のことに過ぎない。今日例外なくマオリは英語を話すといっていい。それは、マオリが生きるために、まさに好むと好まざるとにかかわらず、身につけてこざ…

アオテアロアのニュージーランド化とマオリ語に対する弾圧 (4)

アオテアロアがニュージーランド化される中で、ワイタンギ条約以降、キリスト教化と英語の普及は、徐々に、また急速に進んだ。 いわばこのニュージーランド化の中で、世界の他の多くの民族と同じように、マオリ語を話すことが弾圧されたという悲惨な歴史をマ…

ニュージーランドという呼称のもつ意味 (3)

冒頭でも触れたように、ニュージーランドとは、オランダが植民してつけたノヴァ・ゼランド(「海の土地」という意)という名称を、その後、オランダに代わって支配したイギリスが、イギリス語風に発音し直して名づけた名称に他ならない。 キャプテン・クック…

アオテアロアと日本の共通性 (2)

観光旅行先として人気が出てきているニュージーランドで、オークランドとロトルアとワイトモ洞窟の三角形を五日間ほどでまわる日本人ツアーをキーウィ(ニュージーランド人)たちは全く理解できないものとして観察しているけれど、こうした短期間の旅行であ…

アオテアロア・ニュージーランド (1)

ニュージーランドのことをマオリ語でアオテアロアというが、このアオテアロアとハワイ諸島、そしてイースター島、これらを結んだ三角地帯のことをポリネシア文化圏と呼ぶ。 現在ニュージーランドに暮らすマオリは、このポリネシアのハワイキという伝説的な場…

コハンガレオでマオリ語をマスターした日本人男性の若者

このコハンガレオでマオリ語を学んだ日本人で、佐藤(仮名)さんという20代後半の男性がいたようだ。 3ヶ月ほどでかなりのレベルまでマスターしたというので、園長先生は、「この日本人をみならいなさい」とマオリ語の学習に消極的なマオリに対して苦言を呈…

学校長にお礼を言って、トータルエマージョンスクールを去る

学校長にお礼を言って私はトータルエマージョンを去ることになったが、最後に校長は、この学校に来たことを忘れないようにと、黄色い色でマオリデザインのペイントをした石を私にくれた。 トータルエマージョンは、なんとも学校らしい、素晴らしい普通の学校…

コハンガレオを見学する

芸術科の教師と一緒にいたコハンガレオの教師とも職員室で交流ができたので、隣接するコハンガレオにも出かけてみることにした。 コハンガレオは、政府の正式な機関ではなく、基本的には、保護者からの出資で金銭的にまかなわれているという。だからコハンガ…

お薦めの歌手を聞いてみた

彼女にお薦めの歌手の名前を紹介してもらえるように質問をしたが、たくさんあると言いながら、以下のものを薦められた。 Toni Huata Hinewehi Mohi Tui Teka カパハカのDVDかビデオの入手方法についても聞いたが、以下のサイトで入手できるのではないかと教…

マオリはどこから来たのか

マオリがどこから来たのかということに関してウエリントンの国立図書館員に聞いたときには、インドネシアからメラネシア、ミクロネシア、ポリネシア、そしてアオテアロアという言説があると聞いたし、もとからアオテアロアにいたのだという言説もあると聞い…

トータルエマージョンは、普通の学校どころか、子どもたちが眼を輝かせて勉強しているまさに学校らしい学校だった

それにしても、ここのマオリの生徒たちは素晴らしい顔つきをしている。 きわめて子どもらしい子どもの顔つきだ。 単に素朴とか、田舎いうのとは、全く違う。人なつっこく、人間的で、表情豊かな顔つきをしているのだ。 日本の都会の教育が、教育足りえず、荒…

マオリ語だけで教科目を教えるトータルエマージョンスクールは、ごく普通の学校だった

考えてみれば、トータルエマージョンは、日本語で教える日本の学校のようなもので、トータルエマージョンは、極めて普通の学校だった。 それは、まさにこの校長先生の人格に現れているように思う。 自らの個人史を語る際にも、悲惨さが全く感じられない。 こ…

三世代におけるマオリ語の位置

簡単にいえば、こういうことだ。 祖父母の世代は、マオリ語が中心。父母の世代は英語が中心。現在の世代の子どもたちは、マオリ語を奪い返している渦中にあるのである。 こうして、マオリ語の歴史を学ぶことはコトバの教師としてやはり重要な教訓がある。 民…

タラナキのマオリは反逆児

タラナキのマオリの部族は8つほどあるのだが、1840年のワイタンギ条約に署名しなかったことで有名だ。 これには、ワイタンギ周辺のマオリの部族やワイカトの部族との抗争も理由としてあったらしいが、タラナキの部族の独立心が強かったこともあるという。 1…

マオリ研究は、どこの大学が強いのか

ワイカト大学(The University of Waikato)出身のこのマオリのライブラリアンに、マオリ語の歴史をはじめとして、マオリ語研究だったら、どの大学がいいのかと最後に質問したところ、「学部によって違うが、まずはワイカト大学(The University of Waikato)…

マオリの運動にとってのMLKは、ランギヌイ=ウォーカーではないか

合州国における黒人の意味論的な闘いを私は思い出していた。 1960年代の合州国における黒人の公民権運動が日本の英語教育の教材になることは今日普通のことになっている。 公民権運動については、ウーピー=ゴールドバーグの「ロング ウォーク ホーム [VHS]…

マオリ語を強化していく基本戦略

マオリにとって英語は、仕事を得るための必要手段である。 ワイカト大学(The University of Waikato)で私がマオリ語を一緒に学んだマオリのクラスメートのように英語だけしか話せない、また英語しか話さないマオリも少なくない。 マオリの生き方として、片…

英語を話せるマオリの存在とはどういう存在なのか

現在、ニュージーランドのマオリは、例外なく英語を話すという認識が一般的である。 これは、マオリのイギリス語化は、他ならぬ学校ですすめられた経緯があるからだ。 より正確に言えば、学校でマオリ語を話したら、教師に罰せられたのだ。こうした有形・無…

ニュージーランド・アオテアロアか、アオテアロア・ニュージーランドか

ワイタンギ・デーにワイタンギで私が考えた「アオテアロアとニュージーランド」という基本概念についても、聞いてみた。 つまり、先住民であるマオリ、そのマオリのクペの妻がアオテアロアと呼んだ土地を、ヨーロッパ系白人であるオランダがノヴァ・ゼランド…

ニュージーランドをどうとらえるのか

「多民族国家として、ニュージーランドという国をどうとらえるべきか」と私が質問した際に、ニュージーランドは「二つの民族の国」(A Nation of Two Nations)であると彼は答えた。「二重文化の統治」(“Bi-cultural Governance”)であると。 A Nation of Two N…

パケハという名称について聞いてみた

まず、パケハという名称について質問をしてみた。 パケハとは、一般にヨーロッパ系白人のことを指して言うのだが、これは全部ではないのだけれど、パケハという名称をとても嫌う白人がいる。 たとえばマイケル=キングなど、私が買って読んでいる一般的歴史…

国立図書館にまた出かける

ワイカト大学(The University of Waikato)で学んだという国立図書館の若いマオリの男性ライブラリアンに会うのは、今日で3回目になる。 これまでは、30分程度くらいしか話ができなかったが、今日は1時間半ほど、いろいろと質問をすることができて、私なりに…

ワイタンギを祝う精神

さて、2月6日のワイタンギ・デーが近づいている。 ワイタンギ・デーは、いわゆるワイタンギ条約が結ばれた日という意味だ。 これを「建国記念日」と訳すのは、不正確に違いない。 ワイタンギ・デーはワイタンギ・デーであって、一時期にニュージーランドデー…

タミハナの両親の生活言語

タミハナに言わせると、マオリ語を自分のコトバとして自由自在に操れるものはマオリの中で5%くらいではないかという。まずまずマオリ語を喋れるというのは、マオリの中で20%くらいだろうと続けた。 タミハナの母親も教会に育てられ、100%英語で育ち、マオ…

マオリ土地戦争は終わっていないとタミハナは言った

「マオリ土地戦争はいつ頃終わったのか」と私はタミハナに質問した。 というのも、ニュージーランドの歴史を読んでいると、マオリの抵抗戦争という意味から当然のことなのだが、あちこち戦争だらけで、一体いつ土地戦争が終息したのか、よくわからなかったか…

アオテアロアとニュージーランド

マオリ土地戦争の話になったときに、「イギリス軍の近代的な装備の前にあって、マオリはひとたまりもなかったんだろうね」と私が同意を求めた際に、「イギリス軍は、世界でも最も強いと考えられてきた。いわば、軍隊の中の軍隊。軍隊としてのエリートである…

タミハナのこれまでの職歴

タミハナのこれまでの職歴は面白い。 まず、マオリ土地法廷(Maori Land Court)といって、マオリの土地の法廷争いの関係の仕事。マオリ審判所(Maori Tribunals)で、マオリ土地管理人(Maori land manager)として、13年間働いたという。次に、コハンガ・レオ(Ko…

ポリネシアとメラネシアは違うとタミハナは語った

この前、私があわびをご馳走になり、その代わりに私が寿司を作ってあげたナルワヒアのタミハナの家で、食事をしたあとで、タミハナと私は大いに語り合った。 マオリにとっては、彼らがハワイキと呼ぶポリネシアの故郷がある。 アオテアロアに最初に来たと言…

「ニュージーランド物語」の第2章「マオリ」(その4)を読む

初期のマオリの生活は、おそらく、今日よりも当時の方が、敵の攻撃が可能であったという意味において、子どもたちにとってより危険であったろう。けれども、家庭においては、他の家庭と同様に、愛情(aroha)を享受できていたことだろう。子どもたちは、ピピを…