「入管法新制度「成立後に」と言ったが…法相、同様の答弁」

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 以下、朝日新聞デジタル版(浦野直樹 内山修 2019年1月24日05時00分)から。

 

 外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法について衆院法務委員会は23日、閉会中審査を開いた。成立前、政府は新制度に関して「検討中」と繰り返したが、成立後初となるこの日の質疑でも具体的説明は少なかった。4月の法施行を控え、受け入れ企業からは新制度への不安を訴える声が出ている。

 山下貴司法相は昨年の臨時国会で新制度について問われると「法成立後に政省令で示す」などと繰り返し答弁し、詳細な説明を避けてきた。法施行まで残り約2カ月となったが、この日も山下氏や政府側の答弁は抽象的なままだった。

 大きな論点の一つが、外国人との共生社会を実現するための「総合的対応策」。政府が法成立後の昨年12月25日に決めたが、地方自治体には「対応を丸投げされるのでは」との不安が渦巻いている。

 立憲民主党逢坂誠二氏は地方自治体が担う施策の数と負担額を問うたが、法務省の佐々木聖子・入国管理局長は「検証を行っていない」と答弁。そこで逢坂氏は矛先を山下氏に向け、「(臨時国会では)『総合的対応策を講じるから大丈夫』と繰り返していた。でも、自治体でなんぼ予算を使うかも分からないし、どの事業を担うか数をカウントしていないなんておかしい」とたたみかけた。山下氏は「自治体としっかりと協議し、情報共有しながら実現に努めたい」と答えただけだった。

 外国人労働者が地方から賃金の高い大都市圏に流出してしまうのではないか――。臨時国会ではこうした問題が指摘されていた。だが、この日の質疑でも政府が具体的な対応策を示すことはなかった。

 立憲民主党松田功氏が「大都市圏への(外国人労働者)集中をどう解消させていくのか」と聞くと、佐々木局長は、原因を探り必要な措置を講じるなどと述べた上で「看過しがたい偏在が生じていれば、大都市圏企業による人材引き抜きの自粛要請をする」と答弁した。

 しかし、「看過しがたい偏在」の基準は明らかでない。さらに企業への「自粛要請」がどれほどの効果を持つかも疑問符が残ったままだ。

 新在留資格「特定技能」に一部が移行する現行の技能実習制度の問題点も議論となった。国民民主党階猛氏は、実習生失踪など問題点が少なくないと指摘。「根本的に見直す必要がある」とただしたが、山下氏は「さまざまな問題については(省内の)プロジェクトチームで検討している」と臨時国会と同様の答えに終始した。

 改正入管法は昨年12月の臨時国会で、与党が野党の反発を押し切る形で委員会採決を強行し成立させた。政府は昨年末に総合的対応策のほか、基本方針と分野別運用方針を決め、政省令案も公表。4月の法施行に向けた動きを次々と進めている。

 この日の質疑でどれだけ踏み込んで説明するか注目されたが、肩すかしに終わった。臨時国会で積み残しになった疑問は解消されず、むしろ準備の不十分さが浮き彫りになった。(浦野直樹)

(後略)