長尾藤三「バイシクルバイブレーション」を面白く読んだ

長尾藤三「バイシクルバイブレーション」(1989)

 「自転車のいいところは、玄関からもうスポーツだということです」「そんなに遠くへ行く必要はないのです。わざわざ有名観光地へ出かける人は、何を考えているのか。要は、何もなくていい道だけがある所がいいのです」「おしゃれで速くて(しかし速すぎなくて)、きれいで静かでさわやかなロードレーサーが最高です」「自転車は単なる乗り物ではない。単なるスポーツ用具でもない。生活であり、芸術であり、主張であり、哲学であり、思想である」と喝破される長尾藤三さんの「バイシクルバイブレーション」をたいへん面白く読んだ。

 ジテンシャを乗り始めた人への格好の参考書といえる。ジテンシャにたいする著者の美学があちこちで光る。さらに、著者のコトバと書き方と日本語がまたすがすがしい。

つまりこれは要約すると、「からだを動かす面白さを知った」ということじゃないかな。この世の中、いろんな喜びがあるのでしょうが、つまるところ健康な体でイキイキと動きまわることくらい根元的な喜びはない。人間は動物であるということを確認する必要が、今ほど強い時はないのです。

 (中略)バイシクルという知的な道具を利用して、快適にスマートに動きまわる。このあたりが絶妙なのであります。

 

 生活に疲れ、文明に疲れたら、自転車に戻ってくればいい。これに乗っていると、正しい人間の道を走っている気がして、体は猛々しく、心はすがすがしくなるのです。

 

 自転車の速さで生きる。自転車の軽さで暮らす。自転車のシンプルさで考える。これは狂気のように速くて重くて複雑な時代を、ヘルシーにハッピーに人間らしく生きぬくための一服の清涼剤、一瓶の清涼飲料水のようなものだと、ボクは思うのです。

 ジテンシャに興味のある方、これからジテンシャに乗ってみようかと思う方、すでにジテンシャが好きな方におすすめの一冊。