バスでモトゥエカに向かう

 私が乗り込むバスはアトミックシャトル(Atomic Shuttle)というバス会社によるもので、ネルソンからモトゥエカまでの運賃は9ドル。乗っている時間は、1時間くらいのようだ。あとから乗り込んで来た客で、自転車をバスに乗せたいと運転手に言っている青年がいる。サイクリストの観光客かと思って話しかけると、収穫期に果樹園でフルタイムで働いている地元の青年だった。彼の格好をあらためて見てみると、長靴を履いてチロル帽を被っている。確かにこれはスポーツサイクリングの格好ではない。見かけは中肉中背の体格。控えめな性格のようでいて、案外筋肉質なんだと自分の身体を自慢する。
 先に日本の中古車がニュージーランドでは多く走っていると書いたが、このバスも日本の中古車で、車内の表示も日本語で書いてあるし、左折の時に、「左に曲がります」なんて日本語を喋ったりする。ニュージーランドは日本語学習が盛んだと聞いているが、どれくらいの人がこの日本語アナウンスを理解できるのだろうか。
 モトゥエカは、タバコ栽培と果樹栽培が盛んな地域だが、今はタバコ栽培が減って一層果樹栽培の方に力が入っているらしい。健康のためにも、その方が好ましい。果樹園となれば、収穫の際に一挙に労働力が必要になるわけだ。バスはすでにモトゥエカの町に入っている。果物摘みの青年は、自分が降りる場所が過ぎてしまったようで、あわてて運転手に話しかけていたが、あちこち回るから安心しろと言われている。
 こうして客の宿に合わせてバスを停めてくれるわけだが、私の今晩の宿のエイブルタズマンモーテル(Abel Tasman Motel & Lodge)前にバスを停めてくれた。運転手に礼を言ってバスを降りる。