インターネットカフェで働く中国人学生

チャイニーズレストランは多い

 ハミルトンで私がひいきにしているインターネットカフェで働く中国人の青年がいる。持参したラップトップを図書館で学内ネットワークにつなげようとしていた際に、偶然彼に助けられた話は、すでに書いた。彼もワイカト大学の学生で、名前をケン(仮名)と名乗った。再度、インターネットカフェで仕事をしているときに、彼のワイカト大学(The University of Waikato)のメールアドレスを私は聞いていた。
 ところで、この4月に初めてハミルトンを訪れた際に私が連泊したワイカト川の高台に立つモーテルがある。そのモーテルは、全てが良かったのだが、一つだけ気に入らない点があった。それはその女主人が、アジア人に対して、多少偏見を持っているのではないかと感じられた点である。一言でいえば、感じが悪いのである。
 大学がようやく決まり、2学期が始まる直前、ハミルトンを再訪し、市内のどこかに泊まらないといけない時に、このモーテルだけは避けたいと思ったのだが、私にはあまり選択肢がなかった。仕方なしに同じモーテルに再度泊まるはめになってしまったのだが、気取った眼鏡をかけたこの女主人に、案の定、「あなた、前にうちに泊まったことはなかったかしら」と聞かれて、私がうなづくと、「(ハミルトンのモーテルは)通り過ぎていく客は多いけれど、また来るお客さんはめずらしい」と言われた。「地元民のあなたはハミルトンをみくびっている」「ハミルトンを過小評価しちゃいけない」「ハミルトンはなかなかいい所だ」「再訪者がそんなにめずらしいなら、もっと歓迎しろ」と、一瞬にして内心そんなことを思ったが、どこにでもこういう輩はいるものだと気にすることを私はやめた。
 ところで今回私が言いたいのは、この感じの悪い女主人のことではない。実はここで働く中国人のメイドさんがいたのだが、同じアジア人としての親近感を私は持っていた。例の女主人がああだから、余計そう感じたのかもしれない。それで4月にこの宿を去る際に、彼女が私の部屋を掃除をするのはわかっていたから、余ったパンをテーブルに置いて、「眼の前のワイカト川の鴨にあげてください」と、書き置きをしたくらいだった。
 実はこの彼女にもワイカト大学(The University of Waikato)で偶然に再会したのだ。国際マネジメントを専攻しているという。「なんだ、あなたもここの学生だったの」という挨拶をかわしたのだが、私の言いたいことは、ケンにしてもこのメイドさんにしても、ここの中国人はハミルトンの生活に根ざしているということだ。ワイカト大学(The University of Waikato)はだから庶民的な大学という感じがする。悲壮感はないと思うけれど、一昔前の、日本の苦学生のイメージがどことなく漂う。全てに恵まれた特権的な学生ではないのだ。中国からの移民だったり、インドからの移民だったり、そうした彼らはモーテルやインターネットカフェやガソリンスタンドで働きながら学んでいる。もっとも、中国人留学生には、親元からかなり高額な仕送りがされているとジュディは言っていたけれど、日本人の親は、もっと甘いだろう。