ビクトリア通りのCDショップに行ってみた

マオリのレゲエ

 昨日は日曜日。公共交通機関のバスは動いていない。天気がいいので、散歩がてら、歩道であるリバーサイドウォーク経由でシティセンター街の中心(シティセンター)まで歩いていってみた。
 ハミルトンでは、ビクトリア通りがワイカト川に平行して走っているメインストリートだが、そのビクトリア通り沿いにCDショップがある。
 この店は何度も見かけたのだが、これまでに一度も入ったことはない。なんというか、都会のCDショップというものとは全く無縁の店のように見えたからだ。
 初めて中に入ってみると、1階は映画関係のDVDが並んでいる。一昔前のスタンダードのボーカリストがずらりと並んでいて、中にはフレッド=アステアまでもが置いてある。グレンミラー楽団まであるから、ハミルトンの年齢層や嗜好性がわかろうというものだ。テレビでも、懐メロを、レコード盤の雨降りのないCDで買いませんかという宣伝が少なくないから、往年の世代に向けての懐メロ大会が主流のような気にもなる。
 地下に行っても、音楽の志向性は、全くあかぬけない。ロック、ブルーズ、レゲエなどのCDと一緒にまじって、LPレコードが数百円の値段で置いてある。中には、まるでノミの市状態の「これで売り物になるの」というようなボロボロの45回転のドーナツ盤まであって、10枚、2ドルくらいで売っている。中にはジャケットもなくて、丸裸の状態で置いてあるレコード盤も少なくない。
 そんな中でニールヤング(Neil Young)の「ハーベスト」(Harvest)のDVDやランディニューマン(Randy Newman)の「リトルクリミナルズ」(Little Criminals)のDVD、エリッククラプトン(Eric Clapton)の「レプタイル」(Reptile)のDVD盤が置いてあり、なんだこりゃと思って、売り場で聞いてみたら、関係のないデジタル映像が入っている単なるオーディオDVDだという。
 私は音楽が好きで、ハミルトンでも、日曜日に比較的静かなライブ演奏をやっているパブがあり、ここで聴けるライブ演奏はなかなかレベルが高いと思っている。客が少なく閑散としていることも多いのだが、客が少ないのはハミルトンらしくて私は好きだし、客の入りが少ないのはけっして演奏レベルが低いからではない。
 大学構内でも、学生バンドがときどき野外演奏をしているが、こっちの方の演奏レベルはあまり感心したことがない。だから大学構内で立ち見で聞いたことは全くない。昼飯どきなどは、はっきり言ってかなりの騒音で、まさに「大迷惑」状態である。20人くらいの学生が常時聞いているが、耳をふさいで通行していく学生もいるくらいだから、私の感覚と似ているものがある。
 アレックスとジュディの家にも、ちょいと古いが、ステレオシステムがある。ただ、ひとつのスピーカーは壊れたままだという。彼らは、ほとんど音楽に興味はないようだ。彼らの興味は、なんといってもテレビとゴルフだ。テレビも、映画などよりも、ニュースとスポーツ観戦。私の嗜好性とは違って、音楽が彼らの生活に入ってくる余地はほとんどなさそうだ。
 と思っていたら、私が読書をしているときに、初めてジュディが音楽をかけた。「音楽は好き」「どんなジャンルが好き」というので、「音楽ならなんでも」と答えておいたが、ジュディのかけた曲は、言ってみれば、しょぼい映画のサウンドトラックのような音楽で、中でもかかっていたのが、ジョン=デンバーの「悲しみのジェットプレーン」。これを見知らぬ楽団が演奏した奴や、「キサス、キサス、キサス」なんかの楽団演奏といえば、大体想像がつくだろう。ミューザック*1とは言わないけれど、私がほとんど聞かない手の音楽なのである。
 それからジュディは、遊びでエレクトリックピアノを弾くらしい。譜面をみたら、スタンダード曲ばかりである。いくつかあるカセットなどを見ると、ナット=キング=コールやケニー=ロジャーズがある。やはり往年のスタンダードやごく普通のポピュラーが好みなのだろう。

*1:有名な曲を、有名でないビッグバンドが演奏するようなタイプの音楽をミューザックと呼ぶことがある。