テラパ近くの魚屋に行く

テラパ近くの魚屋さん

 昨日は、テラパ近くの魚屋にようやく行けた。
ようやく行けたというのは、変な言い方だけど、マオリのホアニに教わった場所に二回ほど行ってみたのだけれど、これまでその魚屋を発見することができなかったからだ。
 ニュージーランドで車に乗り始めたばかりだが、これまで一発で場所を探せたためしがない。
 ニュージーランドの道は単純だから、一回行ったことがあればイメージがわいて簡単なのだが、行ったことのない場所で、お目当ての通りを一旦見逃すと、行き過ぎてしまって、見失ってしまうことが少なくない。これは単に慣れの問題で、日本と町のつくりが違うから、イメージを持ちにくいだけなのだろうとは思うけれど。
 ホアニに教えてもらった通りの近くに車を路上駐車して、歩いて、ようやくその魚屋を見つけることができた。あたりは自動車工場が多く、廃車になった自動車が解体され、すっかり部品が取りつくされて錆びた骨組だけの車が無造作に置かれていたりする。どうみても、うまい魚屋がありそうな雰囲気ではない。
 ようやく見つけた三浦半島の三崎のまぐろ工場のような魚屋の中に入ると、ニュージーランドではお馴染みのタラキーやスナッパー(鯛)にまじって、生のカキや、ホタテ、まぐろ、生の海老、湯がいた海老、白魚までもが、ガラスショーケースの中にずらりと並んでいた。
 これは、なかなかすごい。
 生ウニをパンにのせて食べるとホアニが言っていたが、残念ながら今日は生ウニはなさそうだ。
 別のイケスの中をのぞくと、生きた伊勢海老がうじゃうじゃいる。こうした伊勢海老の入った大きいイケスがなんと二つもある。
 久しぶりにこうした魚屋に来ると、なんだかうきうきして、興奮してくる。
 伊勢海老を見ている若い男性と女性のマオリに、「おいしそうだね」と言うと、「本当」と笑った。「コウラだね」と私が言うと、一瞬とまどったみたいだけど、「そう」と男性が答えてくれた。「ほら、カイコウラって、言うじゃない」と私が続けると、「そう、そう」と言ってくれた。
 カイコウラは、南島で、鯨見物で有名な場所の地名だ。コウラが「伊勢海老」で、カイは「食べる」という意味だから、その名も「伊勢海老を食べるところ」ということになる*1
この生きた伊勢海老は、1キロ、57ドルという表示がされている。大体、キロで4000円くらいのものだ。日本よりも少し安いくらいか。私はオーストラリアで刺身やテルミドールで伊勢海老を何回か食べたことがあるけれど、自分で調理したことはない。テルミドールはなんとか作れそうな感じもするけれど、チーズやワインの選択がむずかしそうだ。焼きガニのように香ばしく焼くのもよさそうだし、頭などはブイヤベースのようなスープ系もよさそうだ。
次回来るときまでに調理法を確定して、必ず一匹買うことにしよう。
 今日は、生がきを半ダースと、シュリンプというのか、プローンというのか、海老を10尾ほど。あと、小さめのまぐろの固まりも買う。おじさんが「うちで作っているスシもおいしいよ」と言うので、昼飯用にスシも買ってみた。これで全部で16.95ドルで、1190円ほど。
本当にいい場所をホアニに教えてもらった。
 「マオリも海産物を食べるようだ」というのは私の認識の大きな間違いで、マオリこそ海産物を食べてきたのだ。前にも触れたし、今日もあとで触れるけれど、うなぎなどはマオリにとっては、一番の食材であるほどだ。
 日本とニュージーランドは、互いに島国だし、火山があって温泉がある。海産物も食べるとなれば、共通性は少なくない。
 それから、なんといってもハンギだ。これは、土を掘って、熱した石を入れて、食材を入れ、土をかけて蓋をし、蒸し焼きにする料理だけれど、ハワイやニューギニアなどでも聞いたことがあるから、ポリネシアン料理として太平洋地域に共通性があるのだろう。それで、このハンギだが、芋やとうもろこしなどの食材を、そのまま蒸かした料理だから、まさに日本の蒸かし芋や蒸かしたとうもろこしと同じなのである。
 こちらに来て、「マオリと日本は、共通性が多いんですよ」と私はよく言っているけれど、マオリの食生活について何も知らないのは、はっきりいって日本人の認識不足だろう。
温泉も海産物も豊富なニュージーランドが私は好きだ。

*1:マオリ語で、カイがto eatという意味で、コウラがcrayfishの意味だから、カイコウラは、To eat crayfishということになる。カイコウラの名前は実際はもっと長くて、元来の意味は、偉大な旅人がここに滞在し、伊勢海老を料理するために火をおこしたというのが本来の名になっている。