レイにハッチェリーに連れていってもらい、ハッチェリーの見学

 朝釣りを終え、朝飯を済ませて、われわれの講師レイの小屋に、生徒みんなで出かけた。
 彼の小屋は釣り宿から近く、車で5分程度だ。
 釣り宿には、みな車で来ているが、二台の車にみんなで乗り込むことにした。ニュージーランドの水準からすると、かなりきれいなマイケルの白い車に、みんなのロッドを積み込んで、アンドリューがもう一台、彼の車を出すことになった。
 到着してみると、レイの小屋には、車が二台あった。一台はかなりのオンボロで、必要にして充分というニュージーランドにふさわしいような車だった。
 あたりには、鶏がかけずりまわっていて、レイの家には鶏が結構いる。
 釣り客か釣り友達か、一人友人が来ていた。
 レイの家の近くの川に出かけると、川に囲いがしてあり、でっぷりと太ったトラウトがたくさん泳いでいて、一同感激する。
 レイが一尾一尾の鱒の目方と大きさを測り、緑色のつま楊枝のようなものを胴体の真ん中のあたりで上から二本刺し、別の生簀に入れていく。こうした作業をひとつひとつ済ませると、最後には全部の鱒を川に放流した。マイケルは感動して、デジタルカメラで写真を何枚か撮っていた。
 さて、マイケルとアンドリューは渓流に残って釣りをすることとし、洒落者で獣医のエドワードとデイブ、それに私はハッチェリー(Hatchery)を見学することにした。
http://www.govt.nz/urn.php?id=2%7C13339
 ハッチェリーとは、要するに鱒の孵化場のことである。
 鱒の卵をとり、雄の精子で受精させ、孵化させ、大きく育てる。地域によって、こうしたハッチェリーがいくつかあるようだ。
 そもそも、大変興味深いことに、ニュージーランドでは、鱒はスーパーマーケットなんかで商業的に売ることが禁じられている。
 サーモンも同様で、自然環境で育ったサーモンを商業的に売ることは禁じられている。だから、スーパーで私がよく買ったマルボロ産の鮭は、自然のものではなく、実は養殖されたものだ。
 何故かというと、自然のものを捕獲して売ることが許されれば、商業主義のために捕獲されつくして、自然資源が枯渇してしまうとキーウィーは考えているからである。
 だからニュージーランドでは、鱒釣りは、どこまでもスポーツ(Game fishing)なのである。そのために、こうしたハッチェリーがあり、Fishing & Game Councilという組織が管理しているのである。
http://www.fishandgame.org.nz/
 だから、そもそも生きエサは禁じられているし、フィッシングの時も場所も、釣り方もとても厳しく管理されている。罰金額も相当なもので、無知で知りませんでしたという言い訳は全く通じない世界のようだ*1
 ハチェット見学を終えて、レイの小屋に戻ると、マイケルとアンドリューはまだ釣りから帰ってきていない。最後のキャスティング(last casting)とばかりに、もう一回、もう一回と後ろ髪が引かれる思いを断ち切れないのだろうと、みんなで笑った。
 ようやくそのマイケルとアンドリューと合流し、みんなで川に下りる。
 今回、フィールドワーク的講義といっても、生徒の棹を講師のレイが握って、突然模範演技というか実戦が始まる。
 だからギャラリーである生徒が、講師の素晴らしいキャスティングを感心しながら観察することになる。レイはきちんと説明もしてくれるけれど、鱒を発見して、そこをめがけてキャスティングするとなると、もう講義もへったくれもない。
 我々もただただ彼の実戦的釣りを見ることになる。
 何度もキャスティングするものの、今回も釣果はなし。

*1:釣りの規則に違反すると、捕獲した魚はもちろん、釣りに使った船などの一切の道具を海上トロールによって没収されるという話をアレックスから聞いたことがある。