ポリネシアとメラネシアは違うとタミハナは語った

ワイタンギに向けて出発

 この前、私があわびをご馳走になり、その代わりに私が寿司を作ってあげたナルワヒアのタミハナの家で、食事をしたあとで、タミハナと私は大いに語り合った。
 マオリにとっては、彼らがハワイキと呼ぶポリネシアの故郷がある。
 アオテアロアに最初に来たと言われている例のクペの伝説によれば、ハワイキからアオテアロアに彼らはたどり着いたわけだから、いわばハワイキが彼らの故郷である。
 タミハナによれば、太平洋文化圏には、ポリネシア(Polynesia)とメラネシア(Melanesia)があって、ちょっとずつ違っているけれど、こうした仲間うちではマオリにとってのハワイキは同じものであり、共通性があるという。
 つまり次のように、呼び方が少しずつ違っているけれども、実は同じものだというのだ。

  • マオリ(Maori)
    • ハワイキ(Hawaiki)
  • ハワイ(Hawaii)
    • ハワイ(Hawaii)
  • サモア(Samoa)
    • サヴァイ(Savai)
  • トンガ(Tonga)
    • アヴァイキ(Avaiki)

 かなり発音も似ている、これらのハワイキなる故郷は、当然彼らにとって大切な故郷なのである。
 「マオリにとってのハワイキは具体的にどこになるの」と私が質問すると、タミハナのパートナーのニコルが、味が薄かったのか、私の作ったマッスルの炊き込みご飯に醤油を少しつけながら、「つまり、ハワイキは想像上の場所なのよね」と言った。
 想像上といっても、そのハワイキから、カヌーに乗ってやってきたのは、厳然たる歴史的事実が物語っている。
 先に「ニュージーランド物語」から紹介したように、さかのぼればポリネシア人はアジアから発祥したという説は、かなり興味深い。魚介類を食べる日本人とマオリは、食文化といい、言語の母音の発音といい、かなり共通性がある気がしてならないからだ。
 マオリの文化体験をした日本人が、遠い故郷に来た気がするといった人がいたそうだ。それは無理もないとマオリに言われたのだが、そのマオリは、自らのアジア人としてのルーツを知っていたのだろう。ポリネシアとアジアは、遠いところで、そして案外近いところで結びついているに違いない。
 一般的には現在のタヒチあたりと言われているハワイキとは、ひょっとしてアジア方面であってもおかしくないという空想まで、私などはしてしまうほどだ*1
 さて、ニュージーランドでは、サモアもトンガもクック諸島も地理的に重要である。島民(Islanders)と呼ばれる移民たちはオークランドに多く住んでいるし、あのオールブラックスのウーマンガ選手もアイランダーである。
 ただし、タミハナに言わせると、ポリネシアメラネシアとでは、明確に区別されうるという。
以下のように、ポリネシアメラネシアでは、グループ化ができるのだそうだ。

 タミハナに言わせると、ポリネシアの主食は、タロ(taro)芋とクマラ(kumara)だという。
 タロ芋は、茹でたり、焼いたり、蒸したりして食べる。またタロ芋をペースト状にして、ポイ(poi)というものをつくる。
 一方、メラネシアは、タロ芋は食べても、クマラは食べないという。むしろヤム(yum)芋の方がポピュラーであるとのことだ。
 またこれは神様のことだが、ポリネシアは、ターネ(Tane)という「木の神様」が最高の神様で、メラネシアでは、タナロア(Tanaloa)いう「海の神様」が最高の神様であるという。
 メラネシア、つまり、トンガ、サモア、フィジィの最高の神様である「海の神様」も、ハワイやアオテアロアポリネシアにも存在するのだが、ポリネシアでは「木の神様」が最高だから、「海の神様」は、この下に位置するのだという。
 つまり、「海の神様」も「木の神様」も、共通してもっているのだが、こっちが最高、いやあっちが最高と争っているらしい。
 「日本人と中国人や朝鮮人も、共通性があるのだろう。でも、違うよね。そんなもんかな」と、タミハナは私に言った。
 ポリネシアメラネシアでは、言語と習慣がかなり違うと、再度タミハナは強調した。
 ところで、ポリネシア地域で、マラエに見られるような木彫の技術を発達させたのは、マオリだけのようだ*2
 共通性がありながらも、多様で独自な社会であることは言うまでもない。

*1:後にテパパの職員やマオリ語委員会のスタッフに質問したところ、現在も、ポリネシアマオリがどこから来たのか議論が続いているという。血液鑑定の科学的調査によれば、タヒチあたりの説が有力とのことで、アジア発祥説は、今はあまり有力ではないという話を聞いた。確定的なことはまだわからないのだが。

*2:「知っておきたいオーストラリア・ニュージーランド歴史教育者協議会編p.165