マオリの運動にとってのMLKは、ランギヌイ=ウォーカーではないか

 合州国における黒人の意味論的な闘いを私は思い出していた。
 1960年代の合州国における黒人の公民権運動が日本の英語教育の教材になることは今日普通のことになっている。
 公民権運動については、ウーピー=ゴールドバーグの「ロング ウォーク ホーム [VHS]」や「マルコムX」などのアメリカ映画で今日知ることもできるが、誇りを奪われた黒人たちは、白人の物真似をする猿真似文化に決別し、たとえば縮れ毛を恥ずかしがることをやめ、むしろそれを強調したアフロヘアーやアフリカ民族衣装を復活させたのだった。「黒は美しい」(Black is beautiful.)という意味論的闘いを展開したのもそうした流れからのことだった。
 マオリルネッサンスと呼ばれるマオリの運動も、こうした公民権運動と連動していたと聞いているが、こうしたマオリの運動の、その理論的支柱に、ランギヌイ=ウォーカー(Ranginui Walker)が存在していたことは間違いのないところだろう。
 「マオリ復権運動(Revitalization)の中で、尊敬すべきマオリの人格者、例えば、合州国公民権運動のマーチン=ルーサー=キング=ジュニアのような人物といったら、誰でしょうか」という私の質問に対して、「ランギヌイ=ウォーカー(Ranginui Walker)じゃないか」と彼は答えた。
 他の人物としては、リンダ=ツヒワイ=スミス(Linda Tuhiwai Smith)、シドニー=ミード(Sydney Meed)、そしてその娘のアロハ=ミード(Aroha Meed)などの名前が、彼の口にのぼった。