イギリス帝国主義と日本帝国主義のはざまで翻弄されたシンガポール

 シンガポールにとって、イギリス帝国主義日本帝国主義にとって代わられて、3年半占領下に置かれたわけだが、1945年8月、広島・長崎に原爆が投下され、無条件降伏をした日本に代わって、再度イギリスがシンガポールを占領することになる。
 こうして、シンガポールは、いわばイギリス帝国主義日本帝国主義にその自治権を翻弄された歴史を持つ。
 ヨーロッパに追いつけ追い越せと、本来の能力以上の頑張りをしてきた、いわば後発の資本主義国であり帝国主義国だった日本は、食糧も十分に給付することもできず、いわば統治能力に欠如していたわけだが、本質的には、イギリスも日本もいずれも帝国主義国であることには変わりはない。ある意味では、日本はやり方が品もなく上手でもなかったわけだ。
 日本軍のやった行為を擁護するわけではないが、シンガポールにとって、そのことをどう思うかと彼に聞いてみた。
 今やシンガポールの自主独立が大事であり、若い男性係員は、そのことを強調していた。
 あの戦争でシンガポール人も悲惨な体験をしたわけだが、第二次世界大戦中は、日本にいた庶民もひもじい思いをしていた。ある意味では、こうした日本人も戦争の犠牲者である。そこに連帯すべき共通の視点があり、憎むべきは、そして批判すべきは、帝国主義だと私が話をすると、彼もそれはその通りですねと私の見解に同意してくれた。
 その意味では、われわれ日本人もあの戦争から教訓を学び、われわれも被害者だったことをもっとシンガポール人に伝えるべきだと私は感じた。というのも、このプリズナー博物館に、オーストラリアやニュージーランドなど、連合国側からは、花束と同時にメッセージが掲示されているのに、日本からのメッセージは、私が見落としたのか、皆無だったからだ。
 ところで、日本占領下にシンガポール人に日本語を強制することは日本側は諦めたらしいが、いずれにしても日本語を押しつけられたシンガポールで、最近日本や日本語ブームだという話を聞いていた私は、そのことも尋ねてみた。
 ファッションなど、日本にあこがれるシンガポール人は多く、日本ブームであることに変わりはないと、彼は答えた。
 私は博物館の書籍コーナーでいくつかながめ、また再度彼と話をして、以下の書籍を購入した。

  • “Diary of a Girl in Changi (1941-1945)” by Sheila Allan (Kangaroo Press) 1994
  • “Life and Death in Changi The War and Internment Diary of Thomas Kitching (1942-1944)” edited by Goh Eck Kheng (Landmark Books) 1998
  • “Between Two Oceans A Military History of Singapore from First Settlement to Final British Withdrawal” by Malcolm H Murfett, John N Miksic, Brian P Farrell & Chiang Ming Shuan (Marshall Cavendish Academic) 1999
  • “When Singapore Was SYONAN-TO” by N.I.Low (Times Editions) 1973

 プリズナー博物館から、タクシーで地下鉄の駅Pasir Risまで行ってもらう。