チャイナタウンにある大検証の碑

 ローパサからチャイナタウン*1方面に歩く。チャイナタウンには大検証の碑があるはずと碑を探して歩く。
 大検証とは、日本統治下にあって、当時、日本に抵抗していた中国を支援する傾向にあった華僑の中で、誰が反日分子であるのか判断される検証作業のことをいう。反日的と判断されれば、命はなかった。反日的ではないと判断された場合は、「検」と書かれた紙を渡されたり、シャツにスタンプが押されたりした。
 その大検証が行われた場所を示す碑がチャイナタウンにある。
 陸培春氏の前掲書によれば、「検証現場はサウス・ブリッジ・ロードとクロス・ストリートの交差点」にあり、「検挙された人はサウス・ブリッジ・ロードの方向へ連れていかれたので、サウス・ブリッジ・ロードは「死の道」と呼ばれた。一方、クロス・ストリートは「生きる道」と呼ばれた」という。
 人通りの少なくないシンガポールのチャイナタウンの町並みを見ていると、説明や碑がなければ、何も気がつかずに通り過ぎていたことだろう。

*1:国語を使わない国―シンガポールの言語環境」にチャイナタウンについての説明がある。「シンガポールの案内書では古びたチャイナタウンが必ず紹介されるが、それはもはや当地を代表する景観ではない」として、「再開発で新たな装いをこらした街には、古いチャイナタウン時代の老人や低所得者層は住め」ず、「再開発地で商売をするシンガポール華人は、一般に考えられている華僑ないし中国人とかなり違う。中国語をうまくしゃべれず、郊外に西欧式の住居を構え、中国へ行くと違和感を覚える人が増えた」と書かれている。