斎藤貴男氏の「教育改革と新自由主義」を読んだ

「教育改革と新自由主義」

 斎藤貴男氏の「教育改革と新自由主義 (寺子屋新書)」(2004)を読んだ。
 これまで斎藤貴男氏の著作は全く読んだことがなかったが、とくにエリートの本音と「ゆとり教育」の分析が大変ためになった。
 教育の仕事の本質は、どんな子どもでも発達可能性を認め、そこに挑戦することだとすれば、今の財界の要求がいかに非教育的であるか、すなわち財界エリートの「できん者はできんままでけっこう」という本音がよく理解できる。
 なぜ子どもたち全体を伸ばそうとしないのか、教育の現場にいると不思議に思うことが多いのだけれど、「官から民へ」というスローガンが、コストダウンを前提とした公教育の解体、自己責任という名の無責任、教育の複線化・差別化、社会階層の固定化というねらいが透けて理解できる。
 思うに、今後は、団塊の世代の教員が大量に退職し、教育「改革」という名の教育破壊が今後ますます進めば、さらに機会均等は破壊され、不平等が固定化・拡大する。
 そうなれば、私たちには教育と共同体の死しか残されていない。
 そうさせないためにも、多くの教育関係者、父母に、一読をお薦めしたい。
 東京都の教育委員会ルポルタージュも収録されている。