テレビ番組「渥美清の肖像」を観た

寅次郎あじさいの恋

 俳優・渥美清さんが亡くなってから早いもので10年が過ぎた。
 渥美清さんが亡くなったことを私がテレビニュースで知ったのは、夏休みで息子と一緒に、ある半島の縦走を自転車でしていたときだったから、その時のことはよく覚えている。
 それと、もっと大昔の思い出話をすれば、私の高校時代の文化祭で、映画祭というものがあって、一本は「戦艦ポチョムキン」や「自転車泥棒」のような、いわゆる海外の古典的名作が上映され、もう一本は必ず渥美清さんの「男はつらいよ」シリーズが体育館で上映されていたから、その時以来、ファンになって寅さんシリーズは結構観ている。おそらく48作のうち大半は観ているだろう。
 それで「渥美清の肖像」というテレビ番組を興味深く観させてもらったのだが、たしかに寅さんという、はまり役を得た渥美清さんは、他の役柄をやらなくなってしまってからは、ますます実在の人物のようになり、私たち観客からすれば、寅さんと一体化してしまっていたから、どちらかといえば、私は山田洋次監督の映画監督としての力量の方に関心を持ってしまっていた。
 寅さんシリーズを日常風景として当たり前の存在として受け入れるとともに、どちらかといえば、山田洋次監督が寅さんシリーズとは別に取り組んだ「家族 [DVD]」「同胞 [DVD]」「故郷 [DVD]」「学校 [DVD]」シリーズ、そして近年の「たそがれ清兵衛 [DVD]」などの映画の方に、観客の一人として胸をより熱くしたものだ。
 さて、今日の「渥美清の肖像」では、早坂暁氏との交流について初めて知って面白かったし、またテレビ番組「夢で会いましょう」も見れてとても懐かしかった。
 クレイジーキャッツ植木等との対抗意識からという逸話も紹介された、山田正助役で出演することになった野村芳太郎監督の「拝啓天皇陛下様 [DVD]」(1963年)は渥美清さんならではの名作に違いない。この映画については、かすかな記憶しか残っていいないので、ほとんど覚えていないのだけれど、この作品はあらためて観てみたい気持ちにかられた。
 ところで最近、石田あゆみ主演の「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 [DVD]」を再び観る機会があったが、石田あゆみさんの素晴らしい演技のために、寅さんシリーズにしてはめずらしく、ちょっぴり大人向けの匂いのする映画に仕上がっていることに気がついた。
 早坂氏は、渥美清シェークスピアがやれる俳優だと高く評価していたが、願わくば渥美さんの車寅次郎以外の役を見たかった。