民間業者による学力テストで日本の教育はよくなるのか

amamu2007-04-22

 4月16日、文部科学省は、24日に実施する「全国学力テスト」に愛知県犬山市教委を除く1908市区町村教委が参加すると発表した。
 この「全国学力診断テスト」については、さまざまな問題点が指摘されている。
 正式名称である「全国学力・学習状況調査」は、文部科学省が実施する行政調査であるとしているが、この全国一斉の学力テストによって、学校の序列化がすすめられ、点数主義をあおる結果になりやしないかと懸念されている。とりわけ、学校の「内発性」を軽視し、学力テストの結果が一人歩きをして、競争原理が支配することになる傾向は一層強められるだろう。
 そもそも、学力テストの内容だが、どんなテストであるべきか、どんな学力を評価すべきであるのかという重大な問題がある。
 学力とは何なのか。学力の中にはドリル的に計れるものも確かにあるが、うすっぺらい学力論があるけれど、本来、学力とは狭くもないし浅くもないものであろう。
 学力テストが、教育はどうあるべきか、学力はどうあるべきか、研究する重要な資料であることは言うまでもない。
 現場の一教員としての私が一番懸念するのは、今回の試験が現場の教員が作成・評価するものではなく、ベネッセ、NTTデータなどの民間企業に丸投げしていることだ*1。これでは無責任ではないのか。なぜ、現場の教員が作成・採点しないのだろうか。なぜ文部・科学省が直接に責任を負わないのだろうか。大切な教育を、民間に丸投げなんて対応でいいのだろうか。
 いま、現場の教員たちの間では、安易な学力テストの導入によって、学校間の序列化がすすめられ、点数主義が横行し、点数としての学力結果だけが一人歩きし、世間的に見えづらい豊かな教育活動が評価されず、テスト結果だけを求める「傾向と対策」が大手をふるうことを恐れ心配している。試験当日に、できない子どもを休ませたり、普通なら学校に来るようにすすめる不登校の生徒を休ませるような傾向が強まりはしないか、懸念が強まっている。
 このままでは、合法的・非合法的を問わず、テスト結果だけを求める取り組みがすすめられていくだろう。それでは、教育の自殺行為になりはしないか。
 学校選択性が幅をきかせ、学力テストで序列化されたランキングの中で、結果をより重視した学校選択がなされ、そうした学校には資金援助がされるようになるのだろう。
 なぜ、文部科学省は、生徒の全体を引き上げようとしないのか。
 今回のような学力テストの導入によって教育の荒廃は眼に見えていると私は思うが、文部科学省と犬山教育委員会が主張する論点の差違が、今後ますます注目されることになるだろう。

*1:問題は国が作成するようだが、それ以外のほとんど、すなわち発送・回収・採点・分析はすべて委託して実施されることになっている。それはコールセンターの設置・運営、情報セキュリティ対策などを含んでいる。2007年度の予算は62億円にも及ぶ。