木下恵介監督の「喜びも悲しみも幾年月」(1957年)を観た

喜びも悲しみも幾年月

 1957年につくられたこの映画は、一世を風靡したという意味で、とても有名な映画だし、主題歌もよく知られたものだ。なにより燈台守の話ということは知っていたが*1、これまでしっかりと観たことがなかった。
 高峰秀子佐田啓二出演。
 木下恵介監督は、名作「二十四の瞳 デジタルリマスター2007 [DVD]」同様、人の人生、つまり長い話を撮ることが得意だと感心した。それと、「喜びも悲しみも幾歳月 [DVD]」はロケーションがいい。とりわけ北海道のロケーションがとても良かった。同じく灯台を守る同僚夫婦の奥さんが亡くなる場面の描写力・映画力が素晴らしかった。
 物語の背景にきちんと戦争が拡大していく忘れてはいけない昭和の歴史を挟み込んでいるし、戦時中には燈台守が軍事的目標となって殉職者が増えていったこともきちんと描かれていた。
 夫婦愛のいわゆる美談なのだが、戦争に対しても、戦争の評価について、男性の視点、女性の視点がきちんと描かれている。何より、高峰秀子反戦の思想がきちんと描かれていたし、娘の結婚に関する判断力も、男よりも数倍ましな判断をもっていることを表現していた。
 夫婦愛だから、子供の誕生、子供の成長、そしてその子供の独立という、定番ともいえる話になっている。問題は、それを見せるような表現になるかどうかということなのだが、この映画は、いろいろな意味で、細部まできちんと描かれている名作といえる。
 「二十四の瞳 デジタルリマスター2007 [DVD]」よりも表現力として多少わきが甘いところもあるが、「二十四の瞳」同様、最初のところに伏線をはって、最後の場面まで持っていく映画力が素晴らしい。
 冒頭で紹介したように、1957年の作品。

*1:燈台守の話であることと主題歌を覚えているのだから、子どもの頃に観たことがあるのかもしれない。