木下恵介監督の「野菊の如き君なりき」(1955年)を観た

野菊の如き君なりき

 木下恵介監督による「野菊の如き君なりき [DVD]」は、政夫と2歳年上の民子との悲恋の物語。
 母親役に杉村春子。晩年の政夫役に笠智衆
 この映画は、人間の気持ちを大事にすることの大切さを訴えている。浦辺粂子扮する民子の祖母が、結婚に反対するわけではないけれど、民子の気持ちも考えてやりなさいと、訴えていたことが胸をうつ。
 今でこそ、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立するという憲法の人権意識が定着しているが、昔はそんなことはなかった。親が決めた婚姻に従うことも少なくなかったのである。一言でいえば、明治の封建制ということになるのだろう。今は当たり前でも、昔は当たり前のことではなかったことなど、いくらでもある。そうした歴史認識を得るには、映画の古典を見ることは案外役に立つのである。
 野菊とリンドウ。立派な家並みや渡し舟。日本の美しい風景が続く。
 1955年の作品。