本多勝一氏の「カナダエスキモー」はとても面白い本だ

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本多勝一 極限の民族

 今朝の朝日新聞の朝刊一面にイヌイットの記事が出ていて、小さい時に読んだ本多勝一氏のルポルタージュを思い出した。
 この記事を注意して読んでみたら、注がつけられていて、1963年5月中旬から1ヶ月半、夕刊1面で51回連載された本多勝一氏のルポルタージュ*1のことが紹介されていた。
 小学生だった私でも、全部ではないが、この本多勝一氏のルポルタージュを夕刊で読んだ記憶が鮮明にある。掲載されていた写真も強烈だった。私の記憶に間違いなければ、凍った生肉をナイフで切りながら、シャリシャリ音をさせて筆者が食べる叙述など、いまだに覚えている。生肉の氷が解けると、ものすごい臭いがするので、解ける前に食べなきゃならない話だとか、狩に行って、アザラシだったかセイウチだったか、湯気の出ているその内臓をイヌイットがうどんのように食べる叙述だとか、いま原文を確かめているわけではないのだが、記憶に間違いがなければ、そんな話もあった。
 本多勝一氏の文章から、やたらとイヌイットの暮らしの臭いがするような素晴らしい表現力だった。
 仲間の中では狩猟の下手なある男性の話だとか、イヌイットの夫婦関係や、子供たちのことが、平易な文章で、日本とはまるで違う異文化の世界が生き生きと描かれていた。
 最近は新聞を読んでいても、単に、起こったことを表面的に紹介するだけで、深い分析や本質論がないものが多いように思う。一言でいえば、わくわくして読むような内容のルポがないことが、とても淋しい。
 

*1:写真は藤木高嶺氏。