「男はつらいよ純情篇」第6作を観た

純情篇

 第6作のマドンナは若尾文子
 冒頭の宮本信子森繁久彌*1の演技が素晴らしい。
 おいちゃん役の森川信も、いつものようにすごい。さすがとしか言いようがない。
 山下医師役の松村達雄と寅次郎とのやりとりも可笑しい。
 若尾文子が風呂をもらうときの寅さんとおいちゃんのかけあいが絶妙。森川信渥美清とのギャグの名場面だ。
 寅次郎に対するさくらの厳しい一言のあとの、気持ちと身体とのちぐはぐさを語る寅次郎とさくらとのかけあいも可笑しい。さくらが思わず吹き出すところがいい。
 博が独立しようとして、タコ社長との間で騒動が始まる。
寅次郎を介しての誤解のもとでの宴会。このとらやの騒動を見て、自らの暮らしと比較して、「私たちの生活なんてうそだらけなのね」と、涙する若尾文子がいい。
 脚本は、落語の好きな山田洋次監督らしさが出ている。全篇を通じて落語的要素が満載である。
 最後の場面の森繁久彌の父親の鼻水をたらしながらの涙もいい。鼻水を座布団で拭いている場面が映し出される丁寧な仕事ぶりだ。森繁久彌は名優だ。
 「男はつらいよ」シリーズ中、本作も名作。傑作である。
 ロケ地は、長崎は五島列島
 1971年1月公開。

*1:渥美清森繁久彌を尊敬していたというから、この競演は渥美清にとって嬉しかったろう。