映画"The Princess and the Frog"を観てきた

The Princess and the Frog

 現代の働く女性の代表とも言えるアフリカ系アメリカ人のティアナが主人公の映画「プリンセスと魔法のキス」(The Princess and the Frog)を早速封切り字幕版で観てきた。
 特筆すべきはランディ・ニューマンの素晴らしい音楽性、マルディグラをはじめニューオリンズが背景としてきちんと描かれていること、南部の訛り(accent)、フランスの影響の再確認など、いろいろと楽しめた。
 そして魅力あるキャラクター群。Anika Noni Rose扮するティアナ(Tiana)の"Down in New Orleans(Prologue)"で映画は始まる。アメリカ合州国のどこにでもいそうな白人の幼馴染の女の子・シャーロット・ラボフの経済的に不自由のない家から路面電車に乗って母親のEudoraとティアナは帰宅する。そこは低所得層の黒人が住む家並み。父親のJamesの自慢の娘ティアナの夢はレストランを持つこと。そして最初のハイライト曲の"Almost there"、観客はこれでティアナが好きになるだろう。ティアナは自分の欲しいものがわかっているしっかり者で、働き者だ。
 ドクタージョン(Dr.John)が歌う"Down in New Orleans"は、まさにランディ・ニューマンならではのものだ。ランディ・ニューマンのアルバム"Good Old Boys"、"Land of Dreams"で聞けるニューオリンズのピアノである。ニューオリンズのヴードゥを思い起こさせるドクターファシリエの"Friends On the Other Side"。このthe other sideが、「あちら側」という悪の世界だから大変だ。トランペット吹きのワニのルイスの"When We're Human"もいい。サッチモことルイ・アームストロングシドニー・ベシェ(Sidney Bechet)に対するリスペクトも忘れないまさにディキシーランドジャズ。ニューオリンズには、ワニもいろいろな種類がいるはずだがトランペット吹きのワニにはまいった。南部ホタルのロマンチスト・レイ。レイはとってもいい奴だ。訛りの顕著なケイジャンミュージックスタイルの"Gonna Take You There"、そして"Ma Belle Evangeline"が泣ける。そして、ママ・オーディのゴスペル調の"Dig a Little Deeper"が圧巻だ。若造にはできない年配者の圧倒的説得力。Princeに対する忠告は、"Money ain't got no soul. Money ain't got no heart"お金じゃないよと的確。 かしこい*1Princessに対する評価と忠告はさらに的確だ。Blue skies and sunshine guranteed!(そしたら、青空と太陽はついて回る)という楽天性。そして、Finaleとして"Down in New Orleans"をTianaが熱唱する。
 ティアナとナヴィーンとのmince(みじん切り)とdanceのやりとりをはじめとして、プリンセスとプリンスの掛け合いもなかなか楽しい。そして、見逃せない箇所は、ティアナが、レイを傷つけるようなことを言う場面。あの場面の挿入で、リアリティが増したのは確かだ。
 ということで"The Prince and the Frog"は感心することの多い大人も楽しめるなかなかのできばえだった。
 Randy Newmanの音楽性をはじめ、楽しめた映画だった。
 ディズニー映画は娯楽映画だろうけれど、ハリケーン被災で復興中のニューオリンズを励ましたに違いない。
 英語を教える教材にしても、bee's knees*2が何回か聞こえたし、簡単なようでいて実は難しいalmost thereの語感を学ぶことも大切だ。
 鑑賞後は、ガンボスープ、デザートはベニエにコーヒー*3で決まりだろう。

*1:You's a hard oneというティアナに対するママ・オーディの評価がいい。お金が欲しいというプリンスは、悪い奴ではないが、普通人であり、単純である。貧乏でも、働き者でしっかり者に成長したティアナは両親から愛情を受けて育った。いずれにしてもティアナがプリンスよりも高いレベルにいることに間違いはない。

*2:本ブログでも、「「最高」の意味のthe bee’s knees」という記事を書いたことがある。

*3:ニューオリンズでは、チコリコーヒーが有名。