「男はつらいよ」第11作、「寅次郎忘れな草」を観た

寅次郎忘れな草

 第11作はもちろん前に観たことがあるが、冒頭のピアノ騒動が悲しい。
浅丘ルリ子演じるリリーが初出演。旅回りの歌い手として「港が見える丘」を歌う。
旅先は、北海道。
夜汽車の背もたれが昔懐かしい木製の奴だ。
 柴又の実家の寅さんの部屋でon the road(地方巡業)のリリーがさくらと語り合いながら安心して寝る場面がいい。酔ってとらやに来て一緒に旅に出ようと誘うリリーが悲しい。
そして上野駅で寅さんを送るさくらとの別れの場面がいい。
本篇はリリーの悲しみにあふれているが、「疲れたときぐらい楽しい映画を見たい、という気持ちはまことに当たり前な、自然な人間の欲求」であって、「私は疲れているときに見たくなるような楽しい映画のほうをつくりたい」という山田洋次監督の気持ちは、俺もそうあってほしいと思う。

1973年公開。