アーニー・ガンダーセン氏の「福島第一原発 真相と展望」を読んだ

福島第一原発 真相と展望

 アーニー・ガンダーセン氏の「福島第一原発 ―真相と展望 (集英社新書)」を読んだ。 
 著者のアーニー・ガンダーセン(Arnie Gundersen)氏は、原子力技術者。福島第一原発事故発生時にCNNテレビに出演したガンダーセン氏は、「核燃料の七0〜八0パーセントがメルトダウンしているだろう」とコメントし(2011年3月18日)、「すでにチェルノブイリと同じレベル」と指摘したためパニックを煽っていると批判されたという。原子力業界の役員を務めたのち、現在は、パートナーのマギーと設立したフェアウィンズ・アソシエイツで専門家としての意見提供をおこなっている。
 本書の中で、原子力の専門用語である「冷温停止」の用語の使い方における「まやかし」や、一号機と三号機の「爆発の違い」の原因の推定*1、4号機の抱えるリスク*2、核燃料を取り出すまでに、「必要な技術を開発して作業に着手するまでに一0年、実行するのに一0年ほどかかるのではないでしょうか」と、専門家としての氏の認識を展開している。
 ガンダーセン氏は、「今回放出された一00を超える同位体の中でも、特に有害なものを二つ挙げるとすれば、ストロンチウムセシウム」であり、「東京で検出されたセシウム134、137の数値は恐ろしい数字」と言っている。
 事故当時、「風が海に向かって吹いていた点は何度強調しても足りません。幸運と言ってよいのかはわかりませんが、風向きによっては、はるかに大きな放射能汚染が居住地に生じていてもおかしくなかったのです」と述べている。
 放射能対応策においても、落ち葉や排水溝に気をつけるという外部被爆の留意点と同時に、「子供が靴紐を結んだ指を舐めたときの内部被曝はまた別なのです」と注意を呼びかけている。
 セシウムの焼却は、2次被害を生み出すという教訓はよく指摘されているところだが、ガンダーセン氏は、「エアコンや車のものも含めてフィルターはこまめに交換しなければなりません」「私がもし東京にいたならば・・・いえ、日本のどこであっても、少なくとも数年間はそれをつづけるでしょう」と忠告する。
 また、防衛策に関連して、「放射能物質を理由にマスクをつけている人はいるでしょうか。花粉や風邪の症状と違って放射能物質は五感では感知できませんが、道端の土埃もセシウムを含んでいるのです」と問題提起している。
 ガンダーセン氏の警鐘・警告は、YouTubeでも閲覧できる。

 

*1:ガンダーセン氏は、「使用済み核燃料プールで不慮の臨界が起きたと考えるのが最も自然」と述べている。

*2:ガンダーセン氏は、「四号機の使用済み核燃料プールは、今でも日本列島を物理的に分断する力を秘めています」と述べている。