第43作に続いて、及川泉(後藤久美子)と満男の話。「満男篇」第3弾。
満男の存在によって、さくらとひろしが普通の夫婦にありがちな息子の悩みを抱える。
泉の就職が話題になるとき、寅さんが泉の就職についてアリアで語る。ああした時間が井上ひさしのいう「ユートピア」なのかもしれない。
本作では、泉の就職話といい、聖子の結婚生活といい、女性が抱える悲しみがひとつのテーマである。
鳥取砂丘での再会の場面がいい。
旦那を亡くした聖子役の吉田日出子がいい味を出している。10年間の夫婦生活を告白する場面がすごい。
盛り上がる聖子と寅を心配する満男が階段を踏み外して池に落ちる場面が可笑しい。
泉が、自分が一番不幸せだと思っていたが、旅に出て、知らないおばさんに世話になったり、寅さんに会ったり、砂丘でころころところがってくる満男を見ていて、それほど自分は不幸せではないかもしれないと自問する。
いつものように、とらやに場面がうつって、満男が叔父さんの寅の話を詳細に報告しないところと、さくらが寅に気をつかっておせいさんの話題に触れないところで、満男も成長したもんだという寅さんがいい。
泉の母親である及川礼子役の夏木マリは、はまり役である。
1991年の作品。