総選挙について、朝日新聞の「インタビュー」「オピニオン」欄で、慶応大学教授の渡辺靖さんの意見が載っていた。
「1カ月ほど米大統領選について考えていたら、いつのまにか政党が15も。驚きました」と渡辺さんはコメントしているが、実際、多くの日本人がそう感じているのではないか。俺も、毎日忙しくしていたら、「いつのまにか政党が15も。驚きました」というのが実感だ*1。
ハリケーン・サンディが東海岸を襲った際のオバマ大統領の活躍に触れて、渡辺靖さんは次のように語っている。
「3・11の大災害のあと、日本の政治家が現地で印象的な場面をどれだけ見せたでしょうか。超党派で何かに取り組んで、それを見た人々が心の底から感動するようなことがあったでしょうか。鼓舞されたでしょうか。あれだけ大きな危機に直面したのに。それどころかしばらくしたら相変わらずの政局モードに戻ってしまった。今は3・11の前よりひどくなっているような気さえします」
続けて渡辺さんは次のように語る。
「言葉や論理、数字で人々を説得しようとする政治家は日本にもいます。でもその根底で政治家本人の人生とか体験に裏打ちされていないと、心に響いてきません。オバマ大統領の場合、非常に貧しい時代をへて頑張って出てきた。彼が『夢を失ってはいけない、希望を失ってはいけない』と語るとき、自分の人生を通した説得力があります」
たしかに、今の政治家には魅力ある人物がいないようにみえる。
「将来ああいう人になりたい」と思わせる政治家がどれだけいるのか。大変心もとなくも思える。
ただ、それは、「有権者もメディアもいつのまにか永田町の政治家と同じ目線で見ているとしたら、それは困ったことです」と渡辺さんも語っているように、ジャーナリズムにも責任があるし、国民の側にも責任がある。
よい噺家を育てるのは、大衆である。
よい歌い手を育てるのは、聴衆である。
よい教師を育てるのは、生徒であり、保護者でもあるのだ。
渡辺さんも次のように語っている。
「(12月16日に)第一党を勝ち取った党首や当選した政治家たちが『万歳』をするでしょう。でも今の日本に、日本の政治の世界に、そんな余裕があるでしょうか。むしろ、本当の成果を残して退陣する時に国民から万歳が起こるようになっていたらいいですね」
国民からの「万歳」は別にして、国民主権であるからには、国民が主人公として、国民が評価しなければならないのは当然のことである。
渡辺さんの今回のインタビュー・オピニオンで触れられているわけではないけれど、今度の総選挙の争点が重要であろう。
原発。憲法。税制。TPP。暮らし。教育。沖縄。
いつもながらのことではあるけれど、今回の選挙ほど国民の民度が問われている選挙はないと言えるだろう。