朝日新聞の「特定秘密保護法案」に対する「異議あり」のシリーズ。
今朝の一面に、教育学者(教育研究者)の太田堯さんの「異議あり」が掲載されていた。
以下、紹介したい。
私は95歳。戦前の治安維持法の時代を生きてきました。
社会が戦争に徐々に引きずり込まれていき、情報がなくなり、ものを考えることを無意識に停止させられていった。いま、そんな時代に近づいているのではと恐れます。
この法案の根本問題は、知る権利が奪われることです。その事態がとっくに現実になっているのが学校です。
1950年代、教科書検定が厳しくなり、歴史学者の家永三郎さんが教科書に広島や本土空襲の写真を載せようとして「暗いからダメ」「無謀な戦争という評価は一方的」と不合格にされ、裁判を起こした。私も原告側の証言者として30年余り戦いましたが、検定はなくせませんでした。
文部科学相は検定で「教育基本法の目標などに照らし、重大な欠陥がある」と判定されれば、教科書を不合格にすると言いだしている。そこにこの法律ができると情報が一層統制され、教師は委縮。被害を受けるのは子どもです。
与党は「知る権利は守られる」と言うが、口約束はあてになりません。国旗・国歌法で政府は「強制しない」と答弁したが、教師が立って歌わなければ処分されています。
知る権利は人間が自分の頭で考える権利です。食事や呼吸と同様に生きるために欠かせません。その権利を危うくする法案を、与党は強行採決してまで通そうとしています。私たちの社会の民主主義の質が試されています。