Jack Savorettiの"Tie Me Down"

Tie Me Down

 先日、BBC Scotlandを聞きながら、「ながら」で別のことをしていたら、「なみだ〜の」と聞こえたので、日本語かなと思ってしまった。もちろん聞き違いで英語の歌だった。
 調べてみたら、Jack Savorettiという歌手の"Tie Me Down"という唄ということがわかった。
 歌い出しの「たいみだ〜」のところが、「なみだ〜の」に聞こえてしまったのだが、これは、「たみだ〜」の「みだ〜」に強勢がおかれた発話だったので、そこに引っ張られて、冒頭の「た」を「な」に俺の脳が勝手に置き換えて理解してしまったのだろう。
 むかしタモリさんの「空耳アワー」というのがあった。今回の俺の体験も、それに近い。
 音声は無意識に聞いているところがある。「子音」と「母音」の組み合わせの日本語が母語の俺にとって、どこの言語かわからない音声を聞いているとき、誤って「母音」と「子音」から聞き始めたりして、日本語が外国語に、外国語が日本語に聞こえることがある。こうした錯覚は病気で寝ている子どもが天井の木の節目を眺めているときにだまし絵を見るような体験と似ているかもしれない。そうした経験をすることがある。
 発話がネイティブのようになることより、聴解力がネイティブのようになることのほうが現実性は高い。それでも、完璧になることは少ない。いわゆる「外国語学習には、臨界期、すなわち、その時期を過ぎると学習が不可能になる期間がある」という「臨界期仮説」(critical period hypothesis)がある。
 残念ながら俺の耳がネイティブに近づくことはおそらく死ぬまでないのだろう。
 ところで、Jack Savorettiという歌手をはじめて知った。面白そうな歌手である。英語を聞いていて、こうした副産物はうれしい。