「自民勉強会発言、与野党から批判 百田氏『沖縄2紙つぶせ』議員『マスコミ懲らしめる』」

amamu2015-06-27

 以下、朝日新聞デジタル版(2015年6月27日05時00分)から。 

 安倍晋三首相に近い自民党議員による勉強会「文化芸術懇話会」(代表=木原稔・党青年局長)で、参加議員や講師として招かれた作家の百田尚樹氏から沖縄をおとしめたり、報道機関を威圧したりするような発言が出ていたことが分かった。与野党双方から批判が上がり、首相は国会で「事実であれば大変遺憾だ」と答弁。ただ、野党から求められた自民党総裁としての謝罪には応じなかった。

 25日に党本部で開かれた初会合には、加藤勝信官房副長官萩生田光一・党総裁特別補佐など首相側近議員ら約40人が出席した。

 議員から「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連などに働きかけてほしい」などと政権に批判的な報道機関の規制を求める声が上がった。また、沖縄のメディア事情などを問いかけた議員の質問に、百田氏は「沖縄の二つの新聞社は絶対につぶさなあかん」「米兵が犯したレイプ犯罪よりも、沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方がはるかに率が高い」などと語った。

 26日午前の安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会で、民主の寺田学氏が事実関係をただすと、首相は「事実であるとすれば大変遺憾だが、党の正式な会合ではなく、有志が集まった会合だ」と述べた。

 その後、午後の審議の冒頭、浜田靖一委員長が「そのような趣旨の発言があったことが分かった。甚だ遺憾だ」と指摘。しかし、首相は「様々な方々がいろんな発言をされる。その場にいないにもかかわらず、その方に成り代わって勝手におわびをすることはできない」と拒んだ。

 共産の塩川鉄也氏は「報道の自由への挑戦だ。沖縄県民を侮辱する発言だ」と批判した。

 異論を封じるかのような姿勢が鮮明となり、政権内では世論の離反を招きかねないとの危機感もにじむ。菅義偉官房長官は記者会見で「事実なら非常識だ」と指摘。公明の井上義久幹事長も「スポンサーをどう選ぶかは企業の選択だ。政治が直接働きかけることは断じてあってはならない」と批判した。

 (安倍龍太郎


 ■<視点>見逃せない異論封じ

 一連の発言の舞台になった「勉強会」は、単なる一政党の私的な会合で講師と国会議員が自由に意見交換したもの、と見逃すことはできない。

 勉強会は自民党本部で開かれ、安倍首相を支持する議員や首相側近も出席。講師は首相と共著を出すなど思想的に共鳴し、首相官邸がNHK経営委員に推した百田尚樹氏だった。主催議員の一人は取材に「安倍さんのやっていることが正しいと発信してもらう。安倍さんを応援する会だ」と明言。実際、百田氏の発言に笑い声は起きたが、たしなめる声は出なかった。百田氏が何を言うかは自由だが、政権を担う国会議員がそれを容認したと受け取られても仕方がない。

 昨年の衆院選の際、自民党がテレビ各局に「公平中立」を求める文書を出したり、4月にはテレビ局幹部を党本部で事情聴取したりしたこともあった。また、今国会では首相自らが審議の場で野党議員にヤジを飛ばすなど、自民党内では、異論を抑え込む一方で自らの正しさだけを声高に叫ぶような空気が強まっているように感じる。勉強会での数々の発言には、こうした党の現状が示されている。

 政権党には、異論があっても謙虚に聞き、説得によってできるだけ多くの人々の合意を形成していく姿勢が求められるはずだ。

 普天間移設をめぐり真剣に向き合うべき「沖縄」をおとしめ、言論の自由を揺るがすかのようにメディアの「懲らしめ方」を議論する――首相はこうした党の現実をどう考えるのか。

 そこにあるのは「政権」という重い権力を担う自覚に欠けた、自民党の姿だ。

 (西山公隆)


 ◆キーワード

 <文化芸術懇話会> 自民党の保守色の強い国会議員が立ち上げた勉強会。設立趣意書では「心を打つ『政策芸術』を立案し実行する知恵と力を習得する」と掲げる。安倍晋三首相の考えに近い保守系の文化人や芸術家を講師に招き、政権への支持を発信することで、幅広い層への支持拡大を目指す。