「「憲法の危機」思いは一つ 学生メンバーと元最高裁判事」

amamu2015-09-16


 朝日新聞デジタル版(2015年9月16日05時17分)から。
 元最高裁判事の浜田邦夫さん。SEALDSの奥田愛基(あき)さん。いずれのスピーチも素晴らしいものだった。
 安倍首相の話はもとより、政治家より、人の心を打つものがあった。自分の頭で考え、自分の頭で判断し、自分の頭で行動する。偽物ではないということなのだろう。
 

 与党が安全保障関連法案の採決を今週中にも目指す中で、15日の参院特別委の中央公聴会では学生団体の中心メンバーと元最高裁判事という異色の顔ぶれが「勇気を出して来た」と口をそろえた。元裁判官75人も法案の慎重審議を求める意見書を提出した。

自公「週内成立」確認 安保法案 参院委きょう総括質疑

 前夜は茶髪にTシャツ姿で国会前でマイクを握っていた青年が15日、「朝買ったばかり」というスーツに身を包み、黒髪を固めて参院委員室に現れた。学生団体「SEALDs(シールズ)」の中心メンバー、奥田愛基(あき)さん(23)。「公述人に選ばれた」と連絡を受けてから緊張で眠れなかった。

 SEALDsは「危機に瀕(ひん)した憲法を守る」と抗議を続ける。奥田さんは前日も国会前で「僕はみんなの代表ではない。みんなが個人として来ている。それを伝えに国会に行く」と宣言していた。

 各地のうねりを国会で伝えたかった。「私たちが世論を作り出したのではない。この状況をつくったのは紛れもなく与党の皆さんです。国会答弁や理解しがたい例え話を見て、不安に感じた人が声を上げ始めた」。議員の顔を見渡しながら、淡々と話した。

 与党が週内の法案採決を目指す中、奥田さんは議員に訴えかけた。「政治のことをまともに考えることが馬鹿らしいことだと思わせないでください。自分の信じる正しさに向かい、勇気を出して、孤独に思考し、判断し、行動して下さい」

 「勇気を振り絞って、ここに来た」という奥田さんと同じように、公聴会には「あまりにもひどい状況で黙っていられない」と沈黙を破って来た人もいた。

 弁護士出身で元最高裁判事の浜田邦夫さん(79)だ。2001〜06年に最高裁判事を務めた。「現役の裁判官たちに影響を及ぼすことはOBとしてやるべきではない」と思い、これまでは安保法制についての発言は慎んでいた。だが、「これでは日本の社会全体がダメになってしまう」と思い、公述人を受けた。

 浜田さんは飄々(ひょうひょう)として辛辣(しんらつ)。内閣法制局を「今は亡き」と形容して皮肉った。法案成立後に「訴訟が起きても、最高裁違憲判決を下さない」と述べた与党推薦の公述人に対しては「大変楽観的な見通し。司法をなめたらいかんぜよ」と大見えを切ると、委員会室は拍手に包まれ、与党議員も苦笑いを浮かべた。

 抗議に立ち上がった若者たちについて聞かれた時は「大変うれしく思う」と相好を崩した。「私は60年安保で樺(かんば)美智子さんが亡くなった現場から50メートル離れた場所でデモに参加していた」と打ち明けた。「過激な学生、一般学生、労働組合……」と振り返り、「今回は全然違う」と付け加えた。

 「SEALDsのみなさんが、全国のいろいろな人が、学者が芸能人が、立ち上がっている。事実を認めようとしない政府の態度は、日本の政治、社会に禍根を残します」(伊木緑、後藤遼太)

■元判事75人が意見書

 「裁判は人に刑罰を加える。法に盛られている価値に確信があるからこそ裁判ができ、受ける側も納得する。法律は適正な手続きを経ていなければ信頼を得られるわけがない」

 15日、東京・霞が関。守屋克彦さん(80)がとつとつと解釈改憲による集団的自衛権行使容認に反対する理由を語り始めた。両脇には鈴木経夫さん(81)ら4人が並ぶ。全員が元裁判官の弁護士。同僚や先輩を含む75人の署名を添えた意見書を携え、記者会見に臨んだ。

 意見書は、安保関連法案について、憲法学者や学生らから廃案を求める運動が起きていることに触れた上で、「法案は私たちが愛している国の威信と信頼、国民が支えとする価値に対する信頼を傷つけようとする」としている。

 5人らは12日からファクスで賛同署名を募り、3日間で75人分になった。最高齢は94歳。15日に参院議長あてに郵送したという。

 裁判官は退官後も政治的な発言はしないのが通例だが、北澤貞男さん(75)は「異常事態に黙っているわけにはいかない」。田村洋三さん(72)は「裁判官は憲法を守ることが職務。立場上表明できないが、裁判所におられる人も同じ気持ちだろう」と語った。喜多村治雄さん(77)は「法案成立は終わりの始まり。安保法制で日本が何をしようとしているのか見守っていく」と話した。(市川美亜子)