「安保、採決巡り緊迫 参院委、総括質疑に野党抵抗 未明まで折り合わず」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2015年9月17日05時00分)から。
 

 安全保障関連法案を審議する参院特別委員会は16日、これまでの審議を締めくくる首相出席の総括質疑を開くかどうかで与野党の対立が激化し、17日未明まで攻防が続いた。自民、公明両党は質疑後、特別委で採決し、同日中に参院本会議での成立をめざすが、法案に対する根強い世論の反対を背景に、野党は徹底抗戦する構えだ。一方、国会議事堂の前では市民や団体による反対のデモが続いた。


 特別委は16日夕、締めくくりの総括質疑のための理事会を開こうとしたが、法案採決を前提とした質疑に反対する野党議員が理事会室前に集まり、国会内は騒然となった。「廃案、廃案」などの声が飛び交う中、与野党が採決を巡って折り合えず、理事会は断続的に休憩と再開を繰り返した。

 その結果、総括質疑の開会は大幅に遅れ、16日の特別委はいったん取りやめになった。17日午前0時10分から再び特別委が設定されたが、同1時現在、質疑は始まっていない。一方、16日の参院議院運営委員会理事会で、17日午前10時に本会議を開くことが決まった。

 自民、公明両党は委員会採決後、17日の本会議で法案の可決、成立をめざす。自民は衆参の党所属議員に対し、18日までは国会近くに待機するよう求める「禁足令」を出した。

 これに対し、民主党、維新の党、共産党社民党生活の党と山本太郎となかまたちの野党5党の党首が16日、会談し、与党が特別委での採決を強行した場合、内閣不信任決議案、問責決議案の提出を含め、あらゆる手段で法案成立を阻止することを確認した。

 一方、自民、公明両党と、野党の次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の3党の党首は16日、自衛隊派遣時の国会の関与強化について、安倍内閣閣議決定や法案の付帯決議に盛り込むことで合意した。3党は法案に賛成する方針だ。与党は3党の賛成によって、「採決強行」との印象を薄める狙いがある。


 ■国会は民意をおそれよ 論説主幹・大野博人

 安保関連法案で問われているのは、国会と国会議員でもある。ほんとうに人々を代表しているか――。

 高まる異議申し立ての声と、それにもかかわらず参議院での採決、可決へと進もうとする国会。議員はその亀裂の大きさに恐れを抱くべきだ。

 安倍晋三首相は「長い時間をかけ審議を行ってきた」という。両院を合わせて200時間を超える。

 たしかに長い。そのおかげで、議論は議会の外にも大きく広がった。

 そして、議会内外の議論は多くの疑問点を浮き上がらせた。集団的自衛権憲法問題に始まり、存立危機事態の意味、想定する国際情勢認識のあいまいさ。

 活発化した議論を受けて、憲法や安全保障の専門家、文化人たちが相次いで考えを明らかにした。また、あまり前例のない数の市民が街頭に繰り出して意思を示した。議会の外では、多くの人々が熟考し自分の考えを持ち表明するようになっていた。

 では、国会はどう変わったか。

 200時間以上の審議で問題は明らかになった。しかし、採決を審議の前にやろうと後にやろうと結果は同じ。だとしたら、なんのための審議か。

 熟していった民意と停滞する国会。人々がいらだっているのは、審議を重ねても変わらない議会に対してではないか。

 安保関連法案は、日本という国の根本を変えようとするものである。だからこそたくさんの人が声を政治に届けようとした。だが、党派別の議席数はこの問題が争点にならなかった選挙であらかじめ決まっていて結論が動かない。

 政党政治とはそういうものと割り切るべきなのか。

 しかし、人々は政治に拒まれたと感じるだろう。それで政治への失望感が広まれば政党政治と議会制民主主義そのものへの信頼がむしばまれていく。

 15日、参院特別委員会の中央公聴会で発言した学生団体「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基さんは「一人一人」や「個人として」という言葉を繰り返した。人々の声を党派的な数として見ないでほしい、また議員にもただの数にならないでほしい、というメッセージだろう。

 安倍首相は、引き続き国民の理解を求めていくという。しかし今、国会議員がしなければならないのは、政府といっしょになって国民に理解を求めることより、国民を理解することだ。