「ノーベル文学賞にベラルーシ人作家 フクシマを積極発言」

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 以下は朝日新聞デジタル版(2015年10月8日23時59分)から。

 スウェーデン・アカデミーは8日、2015年のノーベル文学賞ベラルーシ人の作家スベトラーナ・アレクシエービッチ氏(67)に授与すると発表した。授賞理由を、「私たちの時代における苦難と勇気の記念碑といえる、多様な声からなる彼女の作品に対して」とした。長年、期待されてきた同氏の受賞に、発表会場に詰めかけた報道陣らから拍手と歓声が起きた。女性の文学賞受賞は14人目。

 AFP通信によると、ベラルーシの首都ミンスクで会見したアレクシエービッチ氏は、「私ではなく、私たちの文化、歴史を通して苦しんできたこの小さな国への受賞だ」と語った。

 アカデミーのダニウス事務局長は「彼女は40年にわたり新しい文学のジャンルを築いてきた。チェルノブイリ原発事故やアフガン戦争を単なる歴史的出来事ではなく人々の内面の歴史ととらえ、何千ものインタビューをまるで音楽を作曲するように構成して、我々に人間の感情と魂の歴史を認識させた」とたたえた。

 賞金は800万クローナ(約1億1600万円)。授賞式は12月10日にストックホルムで行われる。(ストックホルム=渡辺志帆)

■「黒沢明監督の『夢』はまさに予言」

 アレクシエービッチ氏は、東京電力福島第一原発事故についても積極的に発言し、高度に発達した技術に依存する現代社会への警告を発している。

 事故直後、仏紙リベラシオンのインタビューに対して「(チェルノブイリ原発事故に続く)2回目の原子力の教訓が、技術が発展した国で今起きています。これは日本にとってだけでなく、人類全体にとっての悲劇です。私たちはもう、ソビエト体制にも全体主義にも、誰に対しても罪を負わせることができないのです」と指摘。「原発の爆発が描かれた黒沢明監督の『夢』はまさに予言でした」と述べた。(モスクワ=駒木明義)

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 〈スベトラーナ・アレクシエービッチ〉 48年ウクライナ生まれ。ベラルーシ在住。ベラルーシ大学を卒業後、ジャーナリストとして活動を始める。ソ連末期以降、国家の圧力の中、民衆の声を記録する取材を続けてきた。第2次世界大戦の従軍女性たちの証言を掘り起こした「戦争は女の顔をしていない」はベストセラーとなり、映像化もされた。

 97年には、チェルノブイリ事故に遭遇した人々の聞き書きチェルノブイリの祈り」を発表。日本、スウェーデン、ドイツ、フランスなどで翻訳出版された。ただ、ベラルーシ大統領の非難を受け、国内では出版中止となった。

 96年、「文学における勇気と威厳」がたたえられ、スウェーデン・ペンクラブから賞を受けるなど、国際的な受賞も多い。

 数度来日し、ドキュメンタリー番組の収録や各地で講演をしている。邦訳された主著は5冊ほどある。