「法制局、協議文書残さず 集団的自衛権の憲法解釈変更」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2015年11月24日05時00分)より。

 集団的自衛権を行使できるようにした昨年7月の憲法9条の解釈変更について、内閣法制局が内部での協議の過程を文書に残していないことが、朝日新聞が行った情報公開請求で明らかになった。日本の安全保障政策を転換させる歴史的な憲法解釈の変更だったが、当事者である法制局内の議論が外部から検証できないことになる。


 朝日新聞は情報公開法に基づき、内閣法制局に対し、憲法解釈を変更した昨年7月1日の閣議決定に関する「内閣法制局内部の協議記録」などについて文書を開示するよう請求した。

 だが、開示されたのは(1)首相の諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)に関する資料(2)与党協議に関する資料(3)閣議決定の案文について、法制局が国家安全保障局に「意見はない」と口頭で回答した際の決裁文書の3点で、憲法解釈について法制局内で議論した内容を示す文書はなかった。法制局も取材に「文書は作らなかった」としている。

 しかし、横畠裕介・内閣法制局長官は今年6月11日の参院外交防衛委員会で、政府の憲法解釈の変更について、「この議論の過程ではいろいろ議論をさせて、法制局内での議論をしていたわけです」と答弁。憲法問題に意見を述べる内閣法制局第一部の湯下敦史参事官も取材に対し、「第一部の参事官や部長、法制局長官ら部内で議論した」と認めた。

 その一方で、湯下参事官は「法制局では一般的には議事録を作らない。今回の解釈変更の議論では、作るべきとの判断はしなかった」と説明している。

 内閣法制局長官経験者の一人は「法制局内部で議論の過程を残さず歴史的検証にたえられない、という批判は理解できる。特に法制局第一部は政治色の強い案件を扱うことがあり、記録を残そうという空気が薄かった」と指摘する。

 公文書管理法では、行政機関の意思決定や事務、事業の実績を検証できるよう、「事案が軽微なもの」を除いて文書作成を義務づけており、内閣法制局の対応と同法との整合性も問われそうだ。

 (蔵前勝久)