「甘利経済再生相が辞任 秘書300万円流用「監督責任」」

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 朝日新聞デジタル版(2016年1月29日05時00分)から。

 甘利明経済再生相は28日、内閣府で記者会見を開き、週刊文春で報じられた現金授受疑惑を受け、自らの秘書の監督責任と国会審議に支障を来しかねないといった理由から経済再生相を辞任する意向を表明した。安倍晋三首相は同日、辞任を了承し、後任に石原伸晃自民党幹事長を充てた。政権の屋台骨を支える重要閣僚に「政治とカネ」をめぐる問題が浮上し、第2次安倍政権の発足以来4人目の閣僚交代に至ったことで、安倍首相は今後、政権運営の立て直しを迫られる。

 ■自身の100万円受領認める 議員辞職否定

 甘利氏は28日の会見で、自らの記憶のほか、元検事の経歴を持つ弁護士に調査を依頼し、公設秘書ら事務所関係者を聴取させた結果を合わせたとして経緯を説明した。

 甘利氏は、千葉県白井市の建設業者から2013年11月に大臣室で50万円、14年2月に神奈川県大和市の地元事務所で50万円をそれぞれ受け取った現金授受については認めた。「政治活動への応援の趣旨だと思い、受け取った。秘書に適正に処理するよう指示した」と説明。14年2月に計100万円の寄付金として政治資金収支報告書に記載したとし、違法性のない適正な処理だったと強調した。

 一方、地元事務所の所長を務める公設秘書は、13年8月にこの業者から500万円を受け取りながら、政治資金として処理したのは200万円だけだったという。残り300万円について、甘利氏は「秘書が(業者に)返金を申し入れたが強く拒まれ、結果として手元で管理し、費消してしまった」と述べた。

 公設秘書はこの建設業者から、独立行政法人都市再生機構(UR)との間の補償交渉をめぐり、陳情を受けていた。ただ、秘書は弁護士の聴取に対して「金額交渉等に介入したことはない」などと口利きは否定しているという。

 甘利氏は、この秘書を含む2人の公設秘書が業者から飲食や現金授受などの接待を多数回受けていたと認めた。2人から辞表が提出されたため、28日付で受理したという。

 その上で、甘利氏は「秘書の問題で大変恥ずかしい事態を招いた」などと陳謝。さらに「国会議員としての秘書の監督責任、閣僚としての責務、および政治家としての矜持(きょうじ)に鑑み、閣僚の職を辞する決断をした」と語った。ただ、議員辞職は否定し、引き続き調査を続ける考えを示した。


 ■首相「おわび」、政権に痛手

 安倍首相は28日、甘利氏の辞任表明を受け、首相官邸で記者団に「任命責任は私にある。国民の皆さまに深くおわびしたい」と語った。首相は政権運営の立て直しを急ぐが、看板政策アベノミクスの司令塔を務めた甘利氏を閣内から失った痛手は大きい。新年度予算案などの国会審議や夏の参院選に向けた態勢づくりにも影響を与えそうだ。

 首相は27日の参院本会議での代表質問で、甘利氏について「経済再生、TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする重要な職務に引き続き邁進(まいしん)してもらいたい」と続投させる意向を示していた。だが、28日には「甘利大臣から『国政に停滞をもたらすようなことがあってはならない。辞任をしたい』との申し出があった。大臣の意思を尊重することにした」と述べ、一転して辞任を容認。甘利氏の続投よりも、事態の収拾を優先した。

 甘利氏の後任の石原氏は28日夜、皇居での認証式を経て正式に就任した。石原氏は首相と懇意で、自民党幹事長や政調会長などを歴任。小泉内閣では国土交通相などを務めたほか、安倍首相が政権に復帰した12年12月から14年9月まで環境相も務めた。

 首相は石原氏について「アベノミクスはいま正念場だ。デフレ脱却を確かなものとして、しっかりと成長軌道に乗せていくために能力を発揮してもらいたい」と語った。

 一方、野党各党は甘利氏の現金授受問題や首相の任命責任に焦点を当て、政権批判を強めている。新年度予算案を審議する衆院予算委員会の日程は見通しが立っていない。


 ■甘利氏会見の主な内容

●2013年11月と14年2月、建設業者と面会して50万円ずつ計100万円を受領。ただ、政治資金として適正に処理

●13年8月、公設秘書が業者から500万円を受領。200万円は政治資金として処理したが、残り300万円は秘書が私的に費消

独立行政法人都市再生機構(UR)との補償交渉をめぐる口利きは否定

●2人の公設秘書は28日付で辞職

●秘書の監督責任などから、甘利氏は経済再生相を辞任。議員辞職は否定