サッカーを追いかける時間がないので、湘南ベルマーレのチョウ監督を知らないが、「心の教育も指導者の役割」という記事を読んで、好感をもった。
こうしたことを強調しなければならないこと、こうした意見がどうやら主流の意見ではないことが、現在の日本が深刻な問題状況を抱えているということなのだろう。
そもそもプロスポーツ選手であれば、技術は一流なのだろう。だからこそ、技術指導などより、逆に、心がまえ、人格形成、人間性を説かなければならないのではないか。
V9を達成した川上巨人の強さも、よき野球人である前に、よき社会人、よき人間であることが大事だと説き、実践したことにあると、野村克也さんも繰り返し紹介しているではないか。
以下、朝日新聞デジタル(2016年4月15日05時00分)から。
(私の考え 賭博問題)心の教育も指導者の役割 チョウ貴裁監督
重い処分を下して、この問題は終わりではない。
一連の賭博問題で、彼らのような若者を作ったのは指導者や周囲の大人であり、社会の問題です。「見つからなければいいでしょう」という軽さを、我々大人が許容していなかったでしょうか。
周囲は普段からどんな指導をしていたのか。勝ち負けを超えた大切なものを示すことが指導者の役割です。しかし、いまのスポーツ界には、なにをやっても勝てばいい、という風潮を感じる。「おれの顔に泥を塗るな」といった指導も実は多い。
「違法賭博はするな」と伝えていたかが大事なのではなく、自分の発言や行動が周囲にどんな影響を及ぼすかを選手自身が考え、判断できるようになるための指導を普段からしていたのか。それこそが本質的な問題です。
私は選手から「学校の先生みたい」といわれます。でも、むしろ日常生活に及ぶ細かいことを指導されてきていないことのほうが不思議に感じます。
プロ選手になれば、心の教育をしなくていいのですか。
誰もが将来有望と認めながら消えていった若い選手をたくさん見てきました。才能はあっても、心がなかったからです。
今回の問題について、選手には「身近なこととしてとらえろ」と話しました。自分で考えさせ、大切なことに気づかせてあげる。難しいけど、指導者の永遠の課題だと思っています。(構成・潮智史)
*
チョウ・キジェ 京都府出身。早大、柏などでプレーし、ドイツ留学を経て指導者に。育成年代を含めた指導力が評価を集める。「子どももプロも指導法に違いはない」が持論。12年から現職。