「野党「資質の欠如、史上例を見ず」 法相不信任案提出」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2017年5月18日03時37分)より。

 「共謀罪」法案の国会審議をめぐって、民進党など野党4党は17日、「資質の欠如」を理由に金田勝年法相の不信任決議案を出した。法案提出前は「成案ができたら説明する」と述べて答弁を避け、提出後は官僚に答弁を肩代わりさせる金田氏の言動が審議の混乱に拍車をかけている。

 「国務大臣としての資質の欠如ぶりは憲政史上例を見ない」。野党4党は不信任案の提案理由を説明するなかで、金田氏を痛烈に批判。不信任の一つ目の理由に「国会審議に対する極めて無責任な姿勢」を挙げた。

 金田氏は旧大蔵省出身。当選回数は衆院3回、参院2回で、国会議員のキャリアは20年に及ぶ。外務副大臣衆院予算委筆頭理事などを務めてきた。

 霞が関や国会に通じるベテランだが、1月下旬に始まった通常国会の冒頭から答弁の不安定さが際だった。答弁書を棒読みし、追及を受けると行き詰まり、審議は再三止まった。

 そんな状況に自ら音を上げたのは2月6日。「法案提出後に議論を深めるべきだ」とする文書を法務省を通じて報道機関に配布。与野党から国会質問を封じる内容だと批判され、すぐに撤回・謝罪に追い込まれる失態を演じた。

 その後も「成案ができたら説明する」と答弁回避を繰り返した。野党4党は「真摯(しんし)に説明責任を果たそうという責任を放棄している」と指摘した。

 不信任の二つ目の理由に挙げたのは、強大な権限を持つ捜査機関のあり方を決める法務行政への「著しい無知・無理解」だ。

 4月6日に法案が審議入りすると、与党が林真琴・法務省刑事局長の常時出席を強行。金田氏の答弁の肩代わりをさせた。金田氏もしばしば自席の背後に構える法務省職員に助けを請うた。

 「一般人は捜査対象外」との政府見解にとらわれすぎ、法律上受理されれば捜査しなければならない告発について「一般人は(共謀罪の対象犯罪で)告発されても捜査対象にならない」と答弁。捜査実務と明らかに矛盾する説明をした。

 「花見と犯行現場の下見をどう区別するのか」との問いには、「花見であればビールや弁当を持っているのに対し、下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳などを持っている」と解説。「バードウォッチングをする人は下見と見られる」と逆に突っ込まれ、基準のあいまいさが浮き彫りになった。

 刑事局長の後に同じ答弁を繰り返して「時間の無駄」と指摘されることも。民進山尾志桜里氏は5月12日の質疑でそんな姿を「答弁ブロックだ」と批判した。

 民進安住淳代表代行は17日の記者会見で「議論がかみ合わなかったのは金田氏の答弁能力の問題だ」と指摘。共産党穀田恵二国会対策委員長も「責任者が法案の中心的内容について答弁できないことが相次ぐのは不適格だ」と断じた。

 一方、自民党竹下亘国対委員長は「(不信任案は)理不尽だ。しっかり答弁してきている」と金田氏をかばった。与党は18日の衆院本会議で不信任案を否決する方針だ。(小松隆次郎、小林孝也)