「低層校舎着工「5億円、引けない」 鑑定士、要求を拒否 森友に売却の国有地」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2017年5月22日05時00分)から。

 学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐり、新たな疑惑が浮上した。着工済みだった学園の小学校は低層建築なのに、財務省側は不動産鑑定士に、高層建築を前提とした軟弱地盤の改良費約5億円を売却価格に反映させるよう求めていた。なぜなのか。

 「低層の建物しか建てるつもりがないのに、そこまでは引けません」

 不動産鑑定士は軟弱地盤の改良費について、高層建築を想定した約5億円を市場価格から差し引くよう財務省近畿財務局から求められ、こう答えたという。

 財務局などによると、学園はこの1年前の2015年5月、大阪府豊中市の国有地(8770平方メートル)に小学校を建設するため、この土地を10年以内に買う約束で、財務局と定期借地契約を結んだ。15年12月には、豊中市に建築確認を申請。その後、2階建て一部3階建ての校舎・体育館を現地で着工していた。

 ■地盤の改良費、高層建築想定

 事態が大きく動き出すのは、小学校の基礎の杭打ち中だった16年3月11日だ。学園側が財務局に「新たなごみが見つかった」と報告。「国に撤去をまかせていたら、入札などで時間がかかるため、(17年4月の)開校が遅れる」として、16年3月24日に、定期借地契約を変更したうえでの土地購入を申し入れた。

 早急に売却価格を決めるため、財務局は4月22日、不動産鑑定士に、この土地の市場価格である「鑑定価格」と、森友学園への売却価格を算定するよう依頼した。この時、ごみ撤去費8億1900万円と軟弱地盤の改良費約5億円を記した仕様書を渡し、どちらも考慮するよう求めた。

 国土交通省が09年から14年にかけて作った資料によれば、この土地は1923(大正12)年時点で、池や沼だった部分があった。このため不動産鑑定士は、「相応の軟弱地盤対策を講ずる必要がある」と考えたという。

 しかしこの土地は第1種住居地域の指定(建ぺい率60%、容積率200%)も受けており、高層建築は適さないと判断。市場価格を考えるにあたり、低層住宅の建築用に必要な改良費は、1戸あたり100万円のみを考慮したという。

 不動産鑑定士は「(軟弱地盤の改良費5億円を)考慮した結果、引きませんと(返事をした)」と語る。

 そもそも財務局が不動産鑑定評価を依頼した時にはすでに、校舎や体育館は3階建て以下の低層建築と確定していた。森友学園が、木質材料を多用する建築への補助金国交省に申請した15年7月時点でも、3階建て以下とする設計資料が提出されている。

 一方、学園の籠池(かごいけ)泰典・前理事長は今月16日、財務局の担当者が学園側に送ったとされるメールの内容を、民進党に提示した。

 学園が、土地の購入を財務局に申し入れた1週間後の16年4月1日付で、その約20日後に財務局が不動産鑑定士に依頼したことになる。この時点で、軟弱地盤への言及がある。「埋設されている廃棄物層、軟弱地盤関係等を適正に(不動産鑑定評価の)価格に反映させ、価格提示を行いたいと考えている」との文面だ。

 関東の別の不動産鑑定士は「すべて反映するとマイナスになってしまうような土地の評価を求められるのは通常考えられない」と指摘する。ごみ撤去費に反論するには、鑑定士側に「そんなにはない」というデータが必要で、事実上困難とみる。加えて、軟弱地盤を考慮して欲しいという条件があったとすれば、「『値引きしたい案件だ』という意思表示だったのではないか」と言う。