「<加計獣医学部>「文科省は官邸ににらまれたカエル」前川氏」

 以下、毎日新聞(6/4(日) 2:35配信)より。

 「権力を持っている人がお望みになっていることを、周りの人間が実現させる関係ができているのかもしれない」。学校法人加計(かけ)学園の獣医学部新設を巡り、3日に毎日新聞の取材に答えた文部科学省前川喜平事務次官(62)は、学部新設の動きが進んだ背景に、官邸の力が強まり与党や省庁とのパワーバランスが変わった問題があると強調。官邸をヘビに例え、「総理のご意向」と記された文書の存在を認めない文科省の立場を「ヘビににらまれたカエル」と表現した。【銭場裕司、田所柳子、平塚雄太】


 前川氏は東京都内で、約150分にわたりインタビューに答えた。獣医学部新設の国家戦略特区が認められた状況を「特例を満たす条件が十分に議論されないまま2カ月ぐらいで決まった。プロセスがあまりに乱暴だった」と振り返る。「側近の人たちがそんたくをしたかしなかったのかは私の立場では言えないが、無理が通れば道理が引っ込む事態があちこちで起きている気がする」と語った。

 政と官の関係は小泉政権時代から官邸の力が強まったものの、「当時は各省庁の自律性や専門性が保たれ、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論ができた。与党内の議論も活発だった」とし、自身も小泉政権の方針に抵抗したが人事面で報復は受けなかったという。ただ、現在は3年前に発足した内閣人事局が省庁の幹部人事を管理する状況にある。

 前川氏は「安倍1強」の政治状況を「首相秘書官や首相補佐官が各省の大臣より偉くなった」と表現。「柳沢吉保みたいな人が各大名よりも偉いような状況にある」。側用人から出世した江戸幕府の権力者に例えて現状を解説した。

 文科省は「確認できない」として「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書の存在をいまだに認めていない。一方で、加計学園を巡って省内で共有されたとみられる文書などが野党などに次々と提供されている。

 前川氏は「文科省が文書があったことをなかったことにしろと強いられ、締め付けに耐えられなくなった職員が流したのでは。そうした職員が複数いるように見えるが、今後も増えるかもしれない」と見る。

 文科省の立場は「官邸の目が光る中で、資料があったとは言えない。ヘビににらまれて動けないカエルをいじめないでほしい」と語った。

 獣医学部新設への対応を所管する高等教育局長に委ねていたことに触れ、「今から思えば、もっと積極的に関与した方が良かった」と後悔をにじませた。