以下、朝日新聞デジタル版(2017年8月8日05時28分)から。
山梨県山梨市の職員採用を巡り、試験結果を記した公文書を改ざんしたとして、警視庁は7日、市長の望月清賢(せいき)容疑者(70)を虚偽有印公文書作成・同行使容疑で逮捕し、発表した。容疑を認めているという。捜査関係者によると、複数の採用担当職員が任意の事情聴取に、採用試験の1次試験(筆記試験など)について「合格ラインを下回っていた受験者を引き上げるよう市長に指示された」と説明しているという。
捜査2課などによると、望月市長の逮捕容疑は、採用担当の職員らと共謀し、昨年9月にあった採用試験の1次試験で、基準に満たない受験者が合格できるよう点数を水増しし、結果を記した公文書を改ざんしたというもの。この受験者は今年4月に採用された。
警視庁は7日、市長の自宅を捜索した。市役所庁舎は8日にも捜索する。警視庁は、望月市長が特定の受験者を優遇していたとみており、市長や過去に受験した複数の受験者について、現金の授受などがなかったかも含め、慎重に調べを進める。山梨市は県庁がある甲府市に隣接し、人口は約3万6千人。
■山梨市幹部「チェック難しかった」
職員採用をめぐる不正に関与したとして警視庁に逮捕された望月清賢・山梨市長は、2014年2月に初当選を果たすと、市職員の採用面接に自ら参加できるようにするなど、採用試験への関与を強めていった。
山梨市によると、職員の採用試験は1次試験(筆記試験など)と2次試験(面接、小論文など)がある。
昨年度の採用試験には57人が応募。1次試験の点数は委託先の外部業者から市に文書で通知され、市長ら幹部3人が適性検査の結果や受験者の地域性、男女の偏りを考慮し、成績上位の何番目まで通過させるか合格ラインを決めていた。警視庁は今回、ここで特定受験者の点数がかさ上げされたとみている。
また関係者によると、望月清賢市長は当選後、2次試験の面接に市長が加わるよう仕組みを変更したという。2次試験は、市長ら幹部4人が各150点の持ち点で面接と小論文を評価。ストレス耐性検査を考慮して市長らが決める。警視庁はこの2次試験でも不正がなかったか調べている。
ある市幹部は取材に「小規模な自治体なので採用が幹部らで完結し、チェックは難しかった」。竹越久高・前市長(2010〜14年)は取材に「市長は影響力が強く、除いた方が公平性を保てる」と話す。
望月市長は同市出身。市議3期を経て02年から県議を務め、14年2月に市長に初当選。市議時代には石材販売会社を父親から引き継いで社長を務めていたが、02年に妻(今年2月に離婚)に譲った。元妻は同社の仕入れ資金名目で現金をだまし取ったとして警視庁に逮捕され、約3億7千万円分の詐欺罪で今年7月に起訴されている。望月市長はこの事件について取材に「お金は妻にまかせ、通帳を見たこともない」と話していた。警視庁は、この詐欺事件の捜査などから今回の事件の端緒を得たとみられる。
職員採用を巡り、首長が便宜を図って逮捕される事件は過去にもあった。05年には山形県村山市長が職員採用で点数を水増しなどをする見返りに現金600万円を受け取ったとして加重収賄罪などで起訴された。また奈良県天理市長は01年、職員採用試験の採点結果を改ざんするなどして合格させた見返りに現金100万円を受け取ったとして受託収賄罪で起訴されている。