「トランプ氏、米製武器「売り込み」突出 安倍首相は即応」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2017年11月7日09時17分)から。

 アジア歴訪を日本から始めたトランプ米大統領安倍晋三首相の首脳会談は、北朝鮮問題に直面するなかで結束を強く打ち出した。焦点の通商問題では、多国間の枠組みを求める日本と、二国間の交渉にこだわる米国の溝をあえて埋めずに議論を先送りすることで、日米の「完全一致」を演出した形だ。

 「日米が主導し、あらゆる手段を通じて北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていくことで完全一致した」。会談後の共同記者会見で安倍首相がこう述べると、隣のトランプ大統領はうなずいて見せた。

 両者の「完全一致」(首相)は日米の外務・防衛当局の筋書き通りだった。米国の軍事行動を含む「すべての選択肢がテーブルの上にある」という方針について首相が「改めて日米が百%ともにあることを力強く確認した」と表明。トランプ氏は「(オバマ前大統領の)『戦略的忍耐』の時代はもう終わった」と言い切り、在日・在韓米軍の兵力を挙げて米軍の軍事プレゼンスを誇示した。

 北朝鮮による拉致被害者の家族とトランプ氏の会談も実現。首相にとっては、前日のゴルフに続いて日米首脳の蜜月を内外に示した。トランプ氏にとっても、対北朝鮮で共に強硬姿勢を取る日本との共同歩調をアピールし、温度差のある韓国や中国との会談に向けて足元を固めた格好だ。

 だが、日本政府関係者の予想を超えて、トランプ氏の言動が記者会見で突出したのは、米国製防衛装備品の「売り込み」だった。

 「非常に重要なのは、首相は(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ。そうすべきだ。我々は世界最高の兵器をつくっている」。トランプ氏は米紙記者が尋ねた日本のミサイル防衛の質問に対して、一気に話し始めた。具体的な防衛装備品名まで言及し、日本がこれらを買うことで「我々に多くの仕事を、日本には多くの安全をつくる」と述べた。

 これに対し首相は「日本の防衛力を拡充していかなければならない。米国からさらに購入していくことになる」と応じた。トランプ氏の「バイ・アメリカン」(米国製品を買おう)に防衛装備品購入で即応する発言だ。

 しかし、日本はすでに米国から1機当たり147億円(直近の予算単価)の戦闘機F35計42機の購入を決め、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」も導入する方針だ。防衛省関係者は「トランプ氏が日本で公式に表明した意味は大きい。米国からあれ買え、これ買えということにならないか」と懸念する。

■通商は棚上げ、残った火種

 焦点の通商問題でも、トランプ氏は「米国第一」の発言を隠すことはなかった。共同会見で「互恵的な貿易が私にとって、とても大事だ」と述べ、対日貿易赤字の削減へのこだわりを示した。首脳会談では問題を「棚上げ」したが、対立の火種は残ったままだ。

 環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したトランプ政権は、自国に有利な条件を引き出しやすい日米二国間の自由貿易協定(FTA)を重視する立場で、TPPを主導する日本とは相いれない。さらに北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓FTAの再交渉などを優先しており、日本の優先度は高くない。

 日本側が2月の首脳会談で提案したのが麻生太郎副総理とペンス副大統領による「日米経済対話」。二国間交渉にこだわるトランプ氏を協議から切り離し、「相手のパンチを吸収するスポンジ」(外務省幹部)とするためだ。

 こうした状況から、今回の会談で双方ともFTAやTPPに言及しなかった。両国は、自動車の安全基準の一部見直しやエネルギー分野での協力で一致。外務省幹部は「北朝鮮問題で協力する中、経済を理由に日米関係が毀損(きそん)されていいのかと判断したのだろう」と衝突回避を歓迎した。

 首相も共同会見で「トランプ政権になって、日本企業の投資により1万7千人分の雇用が生まれた。雇用の投資としては第一位だ」と強調。「トランプ氏と二国間の貿易だけではなく、アジア太平洋地域に広がる貿易投資における高い基準づくりを主導していく」と述べた。

 ただ将来、トランプ氏が国内事情から日本への圧力を強めるとの懸念は消えない。6日朝の会合でトランプ氏はこうクギを刺した。「日本との貿易は公平でなく開かれてもいない。(赤字削減のため)我々は交渉をしていく必要がある」

 (後略)