「進む兵器の「バイ・アメリカン」 防衛予算、過去最大に」

f:id:amamu:20051228113104j:plain

 以下、朝日新聞デジタル版(2017年12月24日07時34分)から。

 第2次安倍政権の発足以降、6年連続で膨らむ防衛費の中身を見ると、米国製の防衛装備品の導入が目立つ。トランプ米大統領が呼びかける「バイ・アメリカン」(米国製品を買おう)を後押しするものだ。

 過去最大となる18年度の防衛予算案に加え、政府は今年度補正予算案に弾道ミサイル攻撃への対応のための約600億円を含む2千億円程度を追加で計上する。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の関連費用は28億円。18年度予算案にも7億3千万円を計上する。設置場所として想定する秋田市山口県萩市陸上自衛隊演習場で、地質や電波の影響などを調べる。

 一方、8月末の予算要求時には出ていなかった項目として、戦闘機から遠くの地上や艦船を狙う長距離巡航ミサイルの導入費用約22億円も計上した。

 今回の防衛費の目玉であるイージス・アショアや戦闘機搭載用の長距離巡航ミサイルは、いずれも高額な米国製の装備品であることが特徴だ。

 イージス・アショアをめぐっては今回、米国からの技術支援料などが盛り込まれているが、米ロッキード・マーチン社製の本体設置は1基あたり1千億円弱となる見通し。2基を本格導入する際に負担額は大幅に跳ね上がる。

 近年、日本政府のこうした米国製の装備品の購入が増えている。来年度当初予算をみても、戦闘機F35A(ロッキード・マーチン社)や無人偵察機グローバルホーク(米ノースロップ・グラマン社)、新型輸送機オスプレイ(米ベル社とボーイング社)が並ぶ。

 「バイ・アメリカン」をスローガンにするトランプ大統領は装備品の輸出に積極的だ。11月の来日時には安倍晋三首相との共同記者会見で、「非常に重要なのは日本の首相が膨大な量の装備品を買うこと、そうするべきだ。我々はこれまで世界最高の装備品を作っている」と述べ、露骨に米国製の購入を要求した。

 日本側にも「米国の最新鋭の武器の機能や性能を取り入れられる」(元自衛隊幹部)というメリットがある一方、大量の米国製の装備品を買うことで米政府への支払いが増え、防衛費を圧迫する恐れがある。

 米国製の装備品調達には、日米両政府間で取引する有償軍事援助(FMS)という方法があり、安倍政権発足以降、FMS調達は急増中だ。2012年度は1380億円だったが、来年度は4804億円(概算要求ベース)となる見込み。関係者の間では、米政府への支払いで、必要な維持整備費や訓練費にしわ寄せが及ぶ懸念が出ている。

 FMSはまた、売り主の米国政府の「言い値」になりやすいという指摘もある。グローバルホークは当初の見積もりを大幅に超え、1機あたりの単価は189億円まで膨らんだ。防衛省は一時中止を検討。首相官邸に判断を仰いだ結果、「GOサインが下された」(同省幹部)という。

 首相は米国製の装備品購入に「米国の経済や雇用にも貢献するものと考えている」と極めて前向きだ。政府内では「米国製品の購入は、もはや政治案件だ」(政府関係者)との声も漏れている。(相原亮)