「セクハラ報道 財務次官疑惑 政権、苦肉の更迭先送り 影響拡大回避 与党も批判」

 以下、毎日新聞(2018年4月17日 東京朝刊)より。

 財務省が学校法人「森友学園」に関する決裁文書改ざん問題で揺れる中、麻生太郎副総理兼財務相は、週刊新潮でセクハラ発言が報じられた福田淳一事務次官をすぐに更迭しない道を選んだ。安倍政権のダメージを抑えるための苦肉の策だが、与党では「問題を長引かせてはいけない」と早期辞任を求める声が広がっている。

 菅義偉官房長官は16日の記者会見で「任命権者の財務相が対応する」と述べ、財務省の調査を見守る考えを示した。麻生氏は参院決算委員会で「(事実かどうかは)今だって分からない」と答弁し、現時点での福田氏の処分を否定した。

 改ざん問題を受けても麻生氏が財務相にとどまっているのは、同氏が政権を支えるキーマンの一人だからだ。ここで福田氏が辞任すれば、麻生氏の政治責任を問う声が強まり、安倍晋三首相の立場も苦しくなる。

 しかし、福田氏をかばうことにはリスクも伴う。ある閣僚経験者は16日、「麻生氏にはがっかりした。財務省内をコントロールできていない」と批判。公明党幹部は「なぜ福田氏を切らないのか」と不満を漏らした。

 立憲民主党辻元清美国対委員長は16日、自民党森山裕国対委員長との会談で福田氏の更迭を促した。森山氏は「それは難しい問題だ」と濁したが、会談後、辻元氏は「与党が危機感を共有できていないのは深刻だ」と記者団に語り、政権全体の問題だと強調した。

 与党は、学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題でも野党に押し込まれている。愛媛県職員や学園幹部らと2015年4月に面会したとされる柳瀬唯夫元首相秘書官について、当初は17日からの首相の訪米中の招致を探っていた。しかし、自民党は16日、首相帰国後の23日に衆参両院の予算委員会で集中審議を行う譲歩案を立憲民主党に提示。柳瀬氏を参考人招致にとどめたい与党と、証人喚問を求める野党の綱引きは17日以降も続く見通しだ。

 共同通信の14、15両日の世論調査で、内閣支持率は3月31日と4月1日の前回調査から5・4ポイント減の37・0%になった。日本テレビの13〜15日の調査では、第2次安倍内閣発足後、最低の26・7%まで落ち込んだ。「危険水域」が近づき、自民党関係者は「安倍首相はどうなっているんだという首相批判が強まっている」と危機感をあらわにした。【高橋恵子、立野将弘】