「改憲掲げる安倍氏、政治手法問う石破氏 自民総裁選告示」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年9月7日20時40分)から。

 自民党総裁選が7日に告示され、連続3選をめざす安倍晋三首相(63)と石破茂・元幹事長(61)が立候補した。北海道の地震を受け、9日までの選挙活動を自粛する異例のスタート。20日の投開票に向け、首相の政権運営や政治姿勢、改憲の行方などが問われる。

 総裁選での具体的な論争は10日以降に延期されたが、5年9カ月に及ぶ首相の政権運営の評価のほか、首相の政治姿勢や憲法改正などが争点となる。

 自民党のホームページで公開された両陣営の「所見」で、首相は憲法改正を経済成長や社会保障改革と並ぶ主要政策の柱に掲げた。「次の国会に党として改正案を提出できるよう党を挙げて取り組み、早期発議を目指す」

 首相はこれまで「憲法自衛隊を明記することは自民党員の責務だ」と繰り返し、8月に名古屋市議と面会した際には「首相になってすぐは非常に難しいと思っていたが、5年やってチャンスがめぐってきた」と強調。総裁選を通じて改憲機運を高め、3選後の求心力維持を図る狙いもある。

 対する石破氏ももともと憲法改正には前向きだが、「スケジュールありきとは思っていない」との姿勢をとる。改憲項目も、野党の理解を得やすい参院選挙区の合区解消や緊急事態条項の創設を優先させる構えで、「所見」には憲法改正の文字はなかった。

 むしろ、強調するのは5年9カ月の政権運営を通じた首相の政治手法のあり方だ。7日も記者団に「(安倍)総裁が政治状況をどのように認識しているかは、選挙の過程を通じて明らかになる」とした。森友学園、加計(かけ)学園問題を念頭に政権の姿勢を問う方針で、「政治・行政の信頼回復100日プラン」を主張する。

 ただ、この日に公表した総裁選のキャッチコピーは、立候補表明時に掲げた「正直、公正、石破茂」ではなく「地方創生、日本創生、石破茂」。石破派幹部によると、党内から反発を受けた「正直、公正、石破茂」は政治信条として残す一方、今後は政策論争用として「創生」を強調していくという。

「救助に全力」 石破氏「何もしないのは冒とく」

 7日朝、安倍首相は北海道地震対応のため宿泊した首相公邸から官邸に出勤。記者団から総裁選へのコメントを求められたが、「おはようございます」と右手を上げただけだった。

 同日午前には、地震に関する関係閣僚会議に出席。「2万2千人の救助部隊が夜を徹して懸命に救出救助活動にあたっている。引き続き態勢の機動的強化を行い、人命救助に全力を尽くす」と述べた。この日は総裁選に一切言及しないまま、夜には公邸に戻った。

 首相を支える陣営も当初予定していた出陣式を中止した。陣営の事務総長を務める甘利明・元経済再生相は記者団に「現職の総理が国民の命と暮らしを守ることを優先するのは当然の話」と説明。総裁選での争点を聞かれると、「災害に強い国をつくることが第一だ」と答えた。

 陣営には、党内7派閥のうちの5派閥に加え、事実上の自主投票となった竹下派の一部と無派閥議員が入る。朝日新聞のこれまでの取材では、8割以上の議員が首相支持を明言しており、圧倒的優位を保つ。災害対応で誤れば、情勢が一変しかねない一方、陣営内からは「地震対応は官邸がアピールできる絶好の機会」との声も上がる。

 対立候補となった石破氏はこの日朝、散髪してから記者団の取材に応じ、「(首相と)めざすところが一緒でも、手法、スピード感、ものごとに対する危機認識は異なっている」と明言。「自粛期間だから何もしないということは、選挙、有権者に対する冒瀆(ぼうとく)」とも訴えた。この日は、大阪や愛知の地方議員とも面会した。

 国会議員票で首相側に引き離され、地方票に活路を求める石破氏にとって、「沈黙」は選挙戦略上、大きなマイナスとなる。「発信力」で全国の党員らにアピールし、国会議員票への波及につなげる戦略を描いており、積極的な露出こそ生命線だからだ。

 もっとも、過去の総裁選では現職首相が有利。内政外交を通じて日々、国民の目に触れ、人事権や選挙での公認権を持つためで、現職が敗れたのは、大平正芳氏が福田赳夫首相を破った1978年の1回に過ぎない。石破氏はこの日、記者団にこう強調した。「現職に挑んで戦うのはあらゆる選挙が一緒だ。国民に多くの声があり、党員に多くの声がある。国民に代わって議論する、その役割を果たすということに尽きる」