「(登ってきました)沢上谷 沢登り 魅力を初体験」

f:id:amamu:20051228113104j:plain

 以下、朝日新聞デジタル版(2018年10月19日11時52分)から。

標高750〜900m しんどさ★☆☆☆(岐阜県高山市

 初めての沢登りは、さながら大人の水遊びだった。70代3人、60代2人。いい大人が水につかって「楽しい」「気持ちいい」を連発。渓流を横に渡るのではなく、流れをさかのぼる魅力を初体験した。

 沢上谷(そうれだに)は沢登り入門の谷として知られる。神通川水系の高原川の支流に当たる。岐阜県高山市の丹生川ダムの北4キロ付近。コースには三つの滝がある。

 先導役は日本山岳会東海支部鈴木慎吾山行委員長(72)。登山教室の生徒4人が参加した。私を含む3人は初の沢登りで、靴底がフェルトの靴や水圧軽減スパッツを買って臨んだ。

 普段の登山なら、渓流の岩の上を恐る恐る渡るが、今回はいきなり水の中に入る。ためらいがちに流れに足を入れ、最初は浅いところを選んで歩く。一枚岩を薄い流れが滑るように流れてくるナメ滝で、靴底のフェルトがしっかりと岩の表面をつかむのに気づいた。

 遡行(そこう)コースが二股に分かれているところから支流に入る。樹林の下、気持ちのいいナメ滝の先に急傾斜の大きな一枚岩を幾筋もの流れが下る滝が見えてきた。最初の滝、五郎七郎滝だ。中段まで登って記念写真を撮ってもらう。

 二股の分岐まで戻り、2番目の岩洞滝を目指す。ここまで来ると、靴底のグリップ力に確信が持て、太ももまでつかっても平気で歩けるようになる。ズボンがぬれても気にならない。

 岩洞滝は崖を垂直に落ちる。落差は30メートル近い。滝の裏側に入って水しぶきを浴びながら、流れ落ちる滝越しに緑の木々や尾根を見上げる。沢登りのことをシャワークライミングとも呼ぶわけが実感できた。

 3番目の蓑谷大滝は一枚岩の崖を落ちる。国土地理院の2万5千分の1地形図には、この滝だけが滝の記号で表記されている。滝の手前から急傾斜地を登る「高巻き」で滝の上に回り込める。鈴木さんはいつも高巻きをして上流の出渓点に向かうそうだが、今回はここが終点。滝のしぶきを浴びながら昼食を取り、ナメ滝の流れを追い抜くように軽快に下った。

 上り3時間、下り1時間。楽しくて、きつさを感じないまま登ったらしい。翌日、いつもの登山とは違う箇所の筋肉が悲鳴を上げていた。

     ◇

 〈登山口メモ〉 沢上谷の入渓点は岐阜県道89号(高山上宝線)に沿っている。入渓点は10メートルほどの短い橋がかかっている付近。指導標はない。そばに車数台をとめられる空き地がある。東海北陸自動車道に接続する高山清見道路の高山インターから車で約1時間。
デジタル余話

 初めての沢登りのためにアウトドア用品店「モンベル」で装備をそろえた。シャワークライミングのコーナーで選んだ。登山道具の売り場から離れた釣り道具コーナーの隣にある。普段はまったく立ち寄らない一角だ。沢登りは登山とは違う種類のスポーツなのかもしれない。

 まず沢登り靴。靴底は最も滑りにくいとされる順にウール製フェルト、ポリプロピレン製フェルト、ゴム底の製品がある。「滑って転ばないように」と安全を優先してウール製フェルトを選んだ。値段はポリプロピレン製の1・5倍の2万1千円した。

 スパッツと靴下も沢登り専用品がある。流れの中で砂や小石が中に入らないように、足にフィットする製品だ。潜水に使うウェットスーツのような生地なので保温性も高い。渓流の水は冷たいので欠かせない。

 急傾斜などではロープを使い、胸に巻いたひも(ハーネス)に環状のカラビナを着け、ロープで結んで体が流されないようにする。登山用のものを使えるが、ロープを操作しやすいように指先部分をカットした手袋もいる。保温性を高めた沢登り用手袋を購入した。リュックの荷物がぬれないように防水袋も買った。

 これらが沢登り用の必需品だ。合わせると4万円ほどになった。靴はもう少し安いものを買うにしても3万円はかかる。

 登山は新たな挑戦を始めるたびに必需品が増える。毎度毎度の悩みである。(六郷孝也)