「小6が100キロに挑戦「最後まで歩けるかドキドキ」」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年10月23日09時30分)から。

 古賀市立青柳小学校(福岡県)の6年生全員が100キロを5日間かけて歩く「青小キャラバン」。18回目となる恒例行事に今年も41人が挑んだ。ただ歩くだけではなく、自分たちで計画を練り、一夜の宿でお世話になる施設に電話をし、自分たちで力を合わせて作り上げる。他校の6年生からも「本当の6年生だ」と尊敬される旅を取材した。

 17日朝、7時15分。朝日の差す福岡市立席田(むしろだ)小の体育館で、子どもたちがテキパキと寝袋を丸めていた。席田小ではなく、青柳小の6年生だ。

 寝袋や着替えなどの荷物を保護者の車に積み込み、出発式。「今日は3日目できつくなるけど、声をかけあって盛り上げましょう」「昨日より長いのでペースを守りましょう」と児童が次々に発言する。「体育館を貸していただき、ありがとうございました」と席田小の校長に頭を下げ、「がんばるぞー、エイエイオー!」と拳を突き上げた。

 登校してくる児童にあいさつしながら1、2列でスタスタ歩く。かなりハイペース。引率教員4人と有志の保護者約10人も一緒だ。記者が話しかけると「足の裏が痛い」「もう慣れた」「お弁当が楽しみ」とにぎやか。冨永滉生(こうき)くん(12)は「『すぐ着くやん』って思いながら歩くと、すぐ着く。昨日わかった」と「秘訣(ひけつ)」を教えてくれた。

 泊まるのは体育館や公民館。床に直接寝袋を敷くという。「背中痛くない?」と尋ねると、「寝たらなんも感じません」と中野惺太君(12)が笑った。

 「ひざの裏が痛い。最後まで歩けるのかなって、ドキドキしてる」と打ち明けてくれたのは青柳夢叶(ゆめか)さん(12)。救護車も伴走しているが、「全部歩きたい。達成感があると思うから」と首を振った。この日一緒に歩いた母(37)は「みんな一緒だからできることって、あると思うんです」と見守った。

 1時間弱で3・6キロ先の粕屋町立粕屋西小に到着。体育館での交流会で合唱を披露した。粕屋西小の6年男子は「すごい。なんか本当の6年生って感じ」と感心していた。

 今年は9市町をめぐる8の字コースで、この日は地元の青柳区公民館に宿泊。そこから宗像まで北上し、19日に青柳小にそろってゴールした。「みんなでゴールする達成感を味わい、自信を持ってほしい。感動は一番子どもを成長させます」と井浦政義校長(58)は話した。

 キャラバンは、子どもたちに目標と夢を持ってほしいと、2001年に始まった。ベースとなるのが日々の登校だ。校区は広いが、1年生から徒歩での通学を呼びかける。地域の人が各所に立って見守る。

 4年生は3回登山する。立花山(標高367メートル)は学校から山頂まで往復約12キロを歩く。5年生は3泊4日の自然教室の際、県立少年自然の家玄海の家」まで20キロ余を歩く。今年は9月11日だった。子どもたちは「バスがよかった」「足がもげそう」とぶうぶう言いつつ、最後はみんなでゴールして「やりきったー」とはじけた。

 6年生のキャラバンは恒例行事ではあるが、4月にやるかどうかを児童に問う。やるとなれば目標を決め、計画を練る。お弁当の注文や、宿泊先へお願いの電話をかけるのも児童だ。お茶の補充、宿泊先の掃除、交流会の司会など、41人全員が役割を担う。

 「キャラバンで成長するというより、成長してキャラバンに臨む」と1組担任の小林武弘教諭(41)。カリキュラムは総合学習すべてと音楽の一部をあてる。

 事故防止には細心の注意を払い、事前に教員が全コースを歩いて安全確認する。見守りや荷物運びを手伝った保護者は5日間で延べ約100人。宿泊先では校医が児童の足のマメを手当てした。「保護者や地域の方がしっかり支えてくれるから、できるんです」と井浦校長は話す。(渡辺純子