「「外国人、部品でなく生活者」 6割が外国人、団地の住民が見た国会 入管法案、衆院通過」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年11月28日05時00分)から。

 外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案が27日、衆院を通過した。だが、審議は人数や職種の問題に集中し、日本で生活するための共生策は置き去りのまま。多くの外国人が暮らす地域の住民は、「このままでは支援が不十分だ」と危惧する。▼1面参照

 「移民かどうかという、言葉遊びなど意味がない。既に起きている現実を、与党も野党も見ていない」

 27日、衆院法務委員会の審議を傍聴した愛知県西尾市の川部國弘さん(67)は憤った。川部さんが住む県営緑町住宅は入居する約70世帯のうち約6割が外国人で、大半をブラジル人が占める。愛知県県営住宅自治会連絡協議会や、「外国人との共生を考える会」の会長も務める川部さんは、外国人の住民が増えることによる課題と向き合ってきた。

 公営住宅の入居者を決めるのは自治体などだが、ゴミ出しや生活ルールを教えるのは自治会の役割。愛知県では、共益費や自治会費も自治会が集める。だが、新たに来た外国人の場合は、これらを説明するための通訳を探すことから始めなければならない。「共益費は滞納が相次ぎ、自治会を担える人もいない。団地のコミュニティーは限界を過ぎ、崩壊状態にある」と訴える。

 衆院での議論は、新たに受け入れる外国人の人数や職種に集中した。だが、川部さんは人数の議論が先行することも「外国人を機械の部品としてしかみていない」と首をかしげる。「生活者として考えれば教育、福祉、医療など様々な問題がある」。国は共生策を「総合的に検討する」としているが、具体的な計画は示していない。

 愛知県の団地で外国人が増えたきっかけの一つは、1990年代初頭、日系人に就労のための在留資格を認めたことだ。「この30年間で何が起きたのか、検証もしていないで共生策を出せるのか」と川部さんは指摘する。「国策で外国人を入れるのであれば、国として答えを出すべきだ。労働力として使う企業も考えて欲しい。このままでは、しわ寄せは、社会の弱い部分に行く」

 2時間ほどの審議を経て、委員会の質疑が終わった。腕組みをして聞いていた川部さんは目を閉じ、天を仰いだ。

 「法改正は、白紙の領収書にハンコを押せと言っているよう。5年、10年後の日本のビジョンを描くことが国会の仕事ではないのか」

 (平山亜理)

 ■雇用者側は「歓迎」 「支援不足」危惧も

 「どこも製造業は人手不足。より多くの外国人が長期間働けるようになるのはありがたい」。5人のベトナム人技能実習生を雇っている大阪府八尾市の精密機器製造会社長の男性(51)は、法改正を歓迎する。

 ただ、歓迎の声ばかりではない。「移住労働者と共に生きるネットワーク・九州」事務局の竹内正宣さん(63)は月1回、大村入国管理センター(長崎県大村市)に収容された元技能実習生らと面会。低賃金やパワハラなどを訴え、職場を逃げ出すケースも少なくないという。「外国人は日本語がわからず、労働組合や地方行政に声を届けにくい。雇用側の声だけがまかり通ってしまう」

 人口6万人超のうち4846人の外国人登録者(2017年6月末現在)を抱える茨城県常総市。外国人の子供の就学支援に力を入れる「茨城NPOセンター・コモンズ」(本部・水戸市)の横田能洋代表理事は、法案が通れば家族で来日する外国人が増えるとみる。「日本語が読めない子供は、進学や就職の選択肢が狭められる」と危惧する。

 「子供の就学問題に対して、国はこれまで支援してこなかった。自治体や我々の声を丁寧に聞いてほしい」と注文をつける。