「日本企業70社にも賠償判決の流れ確実 元徴用工訴訟」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年11月29日20時34分)から。

 第2次世界大戦中に、広島と名古屋の軍需工場で働かされた韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身(ていしん)隊員らが、三菱重工業に損害賠償を求めた2件の訴訟で、韓国大法院(最高裁)は29日、同社に賠償を命じた。10月末に新日鉄住金に賠償を命じたのとあわせ、計3件の判決が確定。同様の12件の訴訟で被告になっている日本企業約70社にも賠償判決が出るのは確実とみられ、日韓関係をどう維持していくのか問われそうだ

 今回、判決が出た2件のうち1件の原告は、戦争末期の1944年、国民徴用令に基づいて広島にある三菱重工業の機械製作所や造船所に動員され、被爆した元徴用工5人(いずれも故人)。もう1件は、同年に「女子勤労挺身隊員」として10代前半で動員され、名古屋市の航空機製作工場などで働かされた女性4人と親族1人。大法院は1人あたりに8千万〜1億5千万ウォン(約800万〜1500万円)を支払うよう命じた。

 判決は新日鉄住金の場合と同様に、一連の動員は「日本政府の朝鮮半島への不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為だった」と認定。原告の日本企業に対する慰謝料請求権は、国交正常化の前提となった65年の日韓請求権協定には含まれないとして、賠償を求める権利は消滅していないと判断した。

 専門家の一人は「この論理であれば、日本の植民地支配に関わる被害が広範囲に司法の救済対象になる可能性がある」と指摘する。29日午後には、残る訴訟12件のうちの1件の、八幡製鉄所北九州市)で働かされた元徴用工の遺族が起こした控訴審で、ソウル地裁が新日鉄住金に対し1億ウォン(約1千万円)の支払いを命じた。

 判決確定で原告は、韓国内や第三国で日本企業の財産の差し押さえを申し立てることが可能になり、弁護団はこれをカードとして企業側へ協議に応じるよう圧力を強める方針だ。韓国政府が認定した元徴用工は約22万人。弁護団は追加訴訟を準備しており、問題がさらに広がる可能性もある。

 (後略)

武田肇=ソウル、鬼原民幸