安倍晋三首相は27日、トランプ米大統領と東京・元赤坂の迎賓館で会談し、貿易交渉を加速させることで一致した。夏の参院選以降の決着が念頭にある。米側は貿易赤字の解消を強く求めており、合意内容次第では日本経済に大きく影響するが、選挙で有権者が判断できる材料は限られそうだ。

 両首脳の会談は今年4月に続いて11回目。通訳らを入れた会談を約45分間、少人数会合を約1時間15分間、全体で予定より約1時間長く会談した。会談後の共同記者会見で首相は貿易交渉について「日米ウィンウィンとなる形の早期成果達成に向けて、日米の信頼関係に基づき議論をさらに加速させることで一致した」と語った。

 トランプ氏は4月の日米首脳会談で5月末合意に言及していた。米国の要求に合わせて農産物の輸入を増やせば、日本国内の農家から反発が出る。参院選に影響することを懸念する日本政府は先送りを求め、米側が受け入れた形だ。

 しかし、トランプ氏は会談冒頭で「おそらく8月に両国にとって素晴らしいことが発表されると思う」と述べた。日本側は8月決着を全面否定するが、早期合意の意欲を改めて示した。ツイッターでは「(貿易交渉の成果の)多くは7月の選挙後まで待つことになるだろう」と投稿。加えて会見では「環太平洋経済連携協定(TPP)なんて関係ない。米国を縛るものではまったくない」と述べ、農産物の関税引き下げを最大でもTPPの範囲内にとどめたい日本を強く牽制(けんせい)した。

 一方、6月中旬の訪問を調整しているイランについて首相は会見で「イラン情勢をめぐる緊張状態を緩和していきたい。間違っても武力衝突に至ることがないよう努力していきたい」と強調。トランプ氏は「イランの体制転換を求めているわけではない。非核化を望んでいる」と述べた。イランへの軍事的圧力を高める一方で、米国や日本との対話に応じるよう求めた。

 北朝鮮問題では、条件をつけずに金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との日朝首脳会談をめざす首相に対して、トランプ氏は全面的な支持と支援を伝えた。トランプ氏は首相との会談後、迎賓館拉致被害者家族と面会して「ぜひ解決したい」と述べた。

 トランプ氏は令和になって最初の国賓として来日。夜には天皇皇后両陛下が主催する皇居・宮殿での宮中晩餐(ばんさん)会に出席した。6月28~29日に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席し、改めて首相と個別に会談する見通しだ。