「香港、民主派圧勝 区議選「議席8割超」報道 投票率71%台」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019/11/25 16:30)から。

 政府への抗議デモが続く香港で24日に行われた区議会選挙で民主派が圧勝し、地元メディアは全452議席の8割を超える385議席を獲得したと伝えた。1997年の中国返還後、民主派による過半数の獲得は初めて。香港政府や中国政府に民意が強烈な批判を示した形で、今後の香港情勢に影響しそうだ。

 香港メディア「香港01」によると、25日午前11時半(日本時間午後0時半)現在、1議席を残して民主派が385議席親中派58議席、その他が8議席となっている。

 投票率は暫定で71・2%に達し、返還後、過去最高だった4年前の前回を約24ポイントも上回った。民主派は今回、政府への信任を問う「事実上の住民投票」と訴え、デモに参加する若者らを積極的に擁立。市民やデモ隊の要求を拒み続ける香港政府への不信が、投票率を押し上げた。

 区議選は1人1票の直接選挙で争い、香港で最も民意が反映しやすい選挙とされる。改選前は親中派過半数を占め、民主派は約3割だった。6月にデモが本格化してから最初の選挙で飛躍的に議席を伸ばしたことで、民主派は抗議デモを支持する民意が示されたとして要求を強める構えだ。

 2022年の行政長官選挙で、投票資格を持つ選挙委員(1200人)のうち117人は区議の互選で選ばれる。地元メディアは、今回の圧勝で117人の全てを民主派が占める見通しだと報じた。歴史的な大敗で林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、デモ隊などへの対応の見直しを迫られる可能性があるが、強硬姿勢を強める中国政府の出方が焦点になる。(香港=益満雄一郎、西本秀)

 ■デモの民意反映、「香港人にとっての勝利」

 民主派が圧勝した香港の区議会選挙では、政府に対する抗議デモを呼びかけてきた民主派の団体トップや、デモに参加してきた大学生、元警察官ら多くの新顔が当選した。

 25日未明、九竜半島にある沙田地区の投開票所。現職の親中派議員をやぶり、初当選を決めた民主派の市民団体「民間人権陣線(民陣)」代表の岑子杰(ジミー・シャム)さん(32)は、「私ひとりの勝利ではなく、香港人にとっての勝利だ」と語り、市民の抗議デモへの支持が選挙結果に反映されたとの考えを示した。

 民陣は6月以降、数十万人から200万人規模のデモを呼びかけてきた主要民主派団体だ。

 平和デモで訴えた要求を政府が受け入れず、過激化した若者と警察との衝突が深刻化。社会の分断が進み、岑さんは10月16日に繁華街の路上でハンマーをもった覆面姿の集団に襲われるなど、2回の襲撃を受けて重傷を負った。

 杖をつきながら報道陣の前に姿を現した岑さんは、25日午前1時過ぎに当選が伝えられると、同じ会場にいた親中派対立候補と握手したが、笑顔を見せずに記者会見にのぞんだ

 岑さんの選挙区である沙田地区でも、デモ隊と警察の衝突が繰り返され、催涙弾が飛び交った。岑さんは「(有権者が)警察の暴力を目の当たりにしていたことが、私の得票につながった」と分析した。

 今回の区議選には1997年の中国返還後で最も多い約1100人が立候補し、多くの新顔が選挙戦に挑んだ。

 抗議デモに参加してきた香港中文大学4年生、陳易舜さん(23)も、「デモだけでは自分たちが求める民主的な社会を実現することはできない」と感じ、初めて出馬。同級生らと駅前や住宅街でチラシを配り、支持を広げて当選した。

 香港島の湾仔地区で現職候補をやぶった邱ブン珊さん(36)は8月まで警察官だった。

 警察が催涙弾やゴム弾などを使ってデモ隊を強硬に取り締まる姿に、「香港市民が互いに傷つけ合っている」と心を痛めて辞職した。「まずは地域の人が安心して暮らせる環境をつくりたい」と、地域の再生を訴えて当選を決めた。(香港=高田正幸、宮嶋加菜子)

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 <香港区議会> 香港の地方議会に相当し、4年に1回、18の区で一斉に改選される。予算や条例をつくる権限はなく、公共サービスや福祉など住民の暮らしに関わる政策を政府に提言するのが主な役割。直接選挙で選出される452人の議員のほか、先住民が暮らす地域の代表が務める27人の議員枠がある。