「「出版界はアイヒマンだらけ」業界取材の第一人者が憤る」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019/12/26 7:00)から。

 『私は本屋が好きでした』

 過去形のタイトルが付けられた新刊本が、書店関係者の間で物議をかもしている。

 それもそのはず、著者は、ライターの永江朗さん。書店の取材を三十数年続け、出版業界取材の第一人者ともいわれる人物だ。韓国や中国への敵意をむき出しにしたヘイト本が書店に居並ぶ舞台裏を探ったうえで、出版業界をナチスの幹部になぞらえて「アイヒマンだらけ」と厳しく批判した。

 業界をざわつかせるような本を、なぜ書いたのか。本人に尋ねた。

編集者の妻の違和感
 「なんでこんな本棚になるの?」

 約4年前、在日外国人の女性はヘイト本が並ぶ書店の棚を見て、こうつぶやいた。


 隣にいたのは、夫の尹良浩(ゆんやんほ)さん。出版社「太郎次郎社エディタス」の編集者であり、同じく在日韓国人。尹さんは出版業界の「特有の事情」を説明したが、妻は「私には関係ない」と納得せず、怒っていた。

 尹さんは、この出版業界の内幕について一般の人に分かりやすく示してもらいたい、と永江さんに執筆を依頼した。

 この時点では、一過性のブームというのが永江さんの見通しだった。しかし、2年後に出されたケント・ギルバート氏の『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)は47万部を超える大ヒット。中国や韓国の人を「『禽獣(きんじゅう)以下』の社会道徳」と評するなどして「差別的」と批判されたが、売れゆきには影響しなかった。大手出版社がこの本を出し、売れたという事実に、「単なるブームではない」と危機感を感じるようになった。

 永江さんは「ヘイト本」を、人の意思では変えられない属性(性別、民族、国籍、身体的特徴など)を攻撃する本と定義し、執筆、取材を進めた。韓国政府の政策を批判するかのように装いながら、「韓国人はダメ」と書く本は「ヘイト本」とした。

業界に「特有の事情」
 それでは、出版業界の「特有の事情」とは何なのか。

 永江さんは、八百屋と書店を比較して説明してくれた。

 八百屋の店先に並んだ新鮮で形の良い果物。お客さんにおいしいものを食べてもらおうと、目利きの店主が市場でじっくりと品定めをして仕入れてくる。

 そんなイメージを持つ消費者は多いかもしれない。ところが、書店には当てはまらない、というのだ。

 「入荷したその瞬間まで、どんな本が入ってくるか分からない本屋が数多くあるんです」

 どういうこと?

(後略)

(宮田裕介)