「「安倍方式なら不記載も合法か」皮肉る辻元氏に首相は?」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/2/3 20:58)から。

 「桜を見る会」前日に行われてきた安倍晋三首相の後援会主催の夕食会を政治資金収支報告書に載せないのは脱法行為では――。来年度予算案の審議が始まった3日の衆院予算委員会で、立憲民主党辻元清美氏は、こんな疑問を首相に浴びせ続けた。首相は合法性を強調したが要求された「証拠」の提出は拒んだ。

 辻元氏は皮肉を交えて首相に迫った。「日本中の議員が何千人であっても『安倍方式』で大きな会場を借りて、ホテルで領収書さえ出してもらえば報告書に不記載でも違法ではないと。太鼓判を押してください」

 首相の事務所の職員が参加者から会費を集め、ホテル側に渡し、ホテル名義の領収書を出した、と首相は答弁を続ける。ホテルと契約を結んだのは800人の参加者個人で後援会に収支は生じず、不記載で構わないとも主張している。

 辻元氏はこうしたやり方を「安倍方式」と命名。政治家がパーティーを開いても不記載で済ませることができるのでは、と疑問を呈したのだ。

 これに対し、首相は「同じ形式であれば問題ない」と明言。「後援会の人が集まって、食堂やレストランで割り勘で会費を払って頂いたものは、後援会の報告書には載せない」と説明した。辻元氏の言う「太鼓判」を押した形になった。

 収支報告は、政治活動の透明性を確保することを目的に政治資金規正法に定められている。辻元氏は「法の抜け穴を見つけた脱法行為だ」と指摘。「私が参加者だったら『安倍さんのおかげで高級ホテルで5千円で飲食できた。応援して良かった』と思う。買収ではないか。(疑われないよう)記載するのが法の趣旨だ」とただしたが、首相は「法の趣旨にのっとって、報告している」と繰り返した。

 領収書を参加者から集め、予算委に提出するよう求められたが、首相は「違法性がないので後援者から集める必要はない」と拒んだ。ホテルから明細書を取り寄せることも要求されたが「ホテルの営業の秘密」を理由に応じなかった。(三輪さち子)

首相と辻元氏、やりとり詳報
 首相と辻元氏の主なやり取りは以下の通り。

 辻元氏 今回の新型コロナウイルスの問題では、(政府内で)いつ、誰が、何を決めて、どのような対応したのか。記録を全て保存をしてほしい。

 首相 公文書は法令に従ってしっかり適切に残していく。

 辻元氏 首相の言葉や振る舞いが信じられなくなったら、危機は乗り越えられない。いま、桜を見る会をめぐり、首相は「お友達」を優遇してきたのではないかと疑念をかけられている。私は首相の言葉が信じられる国にしたい。桜を見る会の前夜祭(首相の後援会主催の夕食会)は2013年からニューオータニ、全日空ホテルでやってきたが、全て(会費は)5千円、参加者一人ひとりと契約し、ホテルの領収書をわたす、いわゆる「安倍方式」でやったのか。

 首相 事務所に確認したところ、いずれの年の夕食会もホテル側との合意のもと、1人5千円という価格設定で行われた。会場入り口の受付で私の事務所の職員が会費を収集し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡す、という形で参加者からホテル側への支払いがなされた。領収書にホテルの担当者が金額などを手書きし、宛名は空欄だったということだ。

 辻元氏 首相の理屈が通用するなら、日本中の全ての自治体(地方)議員、国会議員が行う後援会の親睦会などは、例え何千人であっても「安倍方式」で政治資金収支報告書に不記載でも違法ではないということか。「日本中の自治体議員も国会議員もやってもOK」と太鼓判を押してほしい。

 首相 安倍晋三後援会としての収入支出は一切ないから、収支報告書への記載は必要ない。総務相から答弁させてもらう。

 高市早苗総務相 政治団体の収入・支出でない場合は記載の義務はない。

 辻元氏 (収支報告書に記載することで)国民の監視と批判にさらされる。5千円を徴収しても足りない分を安倍事務所とか安倍さん個人がこっそり補塡(ほてん)していたら、違反になる。そんなことをしていないと分かるように、いくら入り、いくら出たか、そして経費がいくらかかったのかを書きなさい、というのが(政治資金規正法の)趣旨だ。趣旨は透明性だ。

 首相 収支報告書についてお詳しいのかもしれないが、今の解釈は間違えだ。後援会に入金があり、損益なりが出た場合は当然、必要となる。例えば私は地元で新春の会をやっており、会費をとる。これは後援会に会費を入れ、後援会として領収書を出しているので、収支報告書に載せている。収支はイコールだが、載せている。今回、収支は発生していない。ニューオータニならニューオータニの領収書を、いわば契約主体である参加した方々に渡している。まったく問題ない。

 辻元氏 他の会合では収支報告書に載せてると言った。なぜ前夜祭だけ(参加者がホテル側への支払いを)直接にしたのか。それは脱法行為と言う。これは首相しか答えられない。これは高市総務相ではない。なぜ前夜祭だけは長きにわたって記載しない方法をとってきたのか。

 高市氏 政治団体の収入であれば収支報告書に記載してもらう必要があるが、他者の収入である会費を単にその場で取りつぐ行為のみをもって収支報告書に記載する必要があるとはいえない。

 辻元氏 なぜ総務相(が答弁する)。自民党、しっかりしてください。(棚橋泰文衆院予算)委員長、反省してください。

 棚橋委員長 ちょっと聞こえない。

 辻元氏 首相しか答えられないことを聞いている。もう、桜を見る会になったら異常な(予算委の)運営だ。

 首相 辻元氏が「脱法」と言ったので、総務相がまず脱法かどうか一般論として答弁させた。例えば後援会の人たちが集まり、食堂なりレストランで割り勘で会費を払ったものは当然、収支報告書には載せない。桜を見る会の関連も、参加者が旅費を1人8万円を払っている方もいる。それは個々に旅行代理店に払っている。例えばホテルに行って何人かで食事し、そこで払って領収書を要求すれば、そのお客が主体となる。これと同じだ。ホテル側が領収書を出し、参加者がそこでお金を払い、ここで完結をしている場合、収支報告書には載せない。多くの国会議員の方々も、そういう会合はあるだろう。

 辻元氏 800人のホテルを借り切った会合で、そんな話、聞いたことはない。いま、首相は脱法できる方法を示しているのではないか。首相がまず範を示す(べきだ)。

 首相 私の事務所の職員はホテル側と参加費のやりとりを仲介したが、ホテル側との契約の当事者はあくまでも個々の参加者だ。領収書の写しなどの提出をホテル側に求めることは困難だ。同じ形式であれば(他の政治家が収支報告書に記載しなくても)問題ないと私は考えている。

 辻元氏 5千円は安いのではないか。

 首相 私の事務所はさまざまな機会にホテルを利用する。私自身もそうだ。政治家として25年(を超す)間に培われた責任があると思う。さまざまな契約において、しっかり支払いはする、短期間に支払う、ということもある。基本的には(夕食会に参加した)800人の多くが宿泊している。そういうことに鑑み、その金額になっている。価格はホテル側が設定したものだ。

 辻元氏 参加者が安倍さんのおかげで高級ホテルで5千円で飲食もできたとなれば買収。ホテルがだいぶディスカウントしてくれたとなったら、(ホテルから値引き分の)寄付を受けているのではないか、という疑いを持たれる。収支報告書を訂正し、追加記載したらいかがか。

 首相 収支報告書に載せないのは当然だと考えている。

 辻元氏 (桜を見る会に関連する)通知のファクスや郵送の事務経費はどこが負担しているのか。

 首相 通常の後援会員の方々との連絡の一環だと考えている。当然、事務所費として計上していると思う。

 辻元氏 なぜ(過去の夕食会の)領収書をかき集めて、「ほら見ろ」とやらないのか。首相は「インターネットに表示している方がいる」と答弁したが、首相としていかがなものか。

 首相 領収書は間違いなくニューオータニ側から出している。全く違法性がなく、あえて後援者から集める必要はないと考えている。契約の主体は参加者であり、参加者とホテル側との関係において領収書を出している。私から後援会の方に頼むことではないと思う。