「五輪延期、世界で要望続出 無視できぬ米水泳連盟の発言」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/3/22 8:30)から。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、7月24日に開幕が予定されている東京オリンピック(五輪)の開催延期を望む声が続出した。なかでも発言力が大きい米国陸上競技連盟と米国水泳連盟が延期を希望。国際オリンピック委員会IOC)のバッハ会長が、延期など通常開催以外の可能性に初めて言及したのが引き金になったとみられる。

 米国水泳連盟は20日、ティム・ヒンチー最高経営責任者(CEO)の名前で、米国五輪・パラリンピック委員会(USOPC)に公開書簡を送ったことを公表した。世界中の選手が練習や準備ができず、多大なる重圧やストレスなどを抱えていると指摘。USOPCに対して「東京五輪を1年延期するよう、提唱してもらいたい」と、IOCに働きかけるよう申し出た。

 USOPCは同連盟の主張に理解を示した上で、「判断を促す前に、(IOCには)情報収集や専門家の助言などを集める時間をもう少し与えるべきだ」などと声明を出した。

 ところが、タイミングを合わせた格好で、今度は米国陸連が声を上げた。マックス・シーゲルCEO名でUSOPCに20日付で送った書簡を公表。期限には触れなかったが「IOCに延期を働きかけてほしい。完璧な答えがないことは承知している。だが、選手たちが身体的にも精神的にも十分に準備ができると同時に、自身や家族の面倒を見ることができる」と要望した。

 五輪をめぐっては、米テレビ局NBCIOCに計1兆円超の放映権料を支払っていることもあり、米国の意向が影響する。競泳と陸上は夏季五輪の花形競技だ。NBCにとっても重要なコンテンツで、両連盟の発言は無視できない。

 延期論は米国体操協会でもくすぶる。東京五輪延期について、代表候補選手たちに匿名のアンケートを実施したと、ロイター通信が報じた。2016年リオデジャネイロ五輪女子4冠のシモーン・バイルスら現場の意見を集約するという。

メディアの論調にも変化
 メディアの論調も変わってきた。米ワシントン・ポスト20日、「東京五輪は停止せよ。今すぐに」というコラムを掲載した。米ニューヨーク・タイムズ紙に続き、7月の開催を取りやめるよう訴えた。

 バッハ会長が19日、ニューヨーク・タイムズ紙に「異なるシナリオは複数検討している」と延期など、通常開催以外の可能性に初めて言及したことで、米国以外でも延期を求める声が相次ぐ。ノルウェー・オリンピック委員会は20日、バッハ会長に「状況が世界規模で終息するまで東京五輪は開催すべきではない」という文書を送付したと公表。ブラジル・オリンピック委員会は21日、東京五輪の1年延期を求める声明を発表した。スロベニア・オリンピック委員会のガブロベツ会長は、ロイター通信に「五輪の原則に照らし合わせれば、7月に開催してはいけない」と話した。英国陸連のニック・カワード会長は、英デイリー・テレグラフ紙のインタビューに「確実に延期すべきだ」と答えている。(ロンドン=遠田寛生)